2015年1月20日(火)

仕事は一番忙しいヤツに頼む -会社が絶対手放さない人の条件【三井住友海上 柄澤康喜社長】

経営トップが太鼓判「会社が絶対手放さない人の条件」

PRESIDENT 2014年2月17日号

勝見明=構成 宇佐美雅浩=撮影
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「事実」の向こうに「真実」を見抜く力

三井住友海上社長 柄澤康喜氏

私が好んで使う「巧遅拙速」という、孫子の兵法の言葉をご存じか。「巧遅は拙速に如かず」。巧遅は巧みでも遅い、拙速は拙くても速い。つまり、完璧さより速さが勝る。ビジネスは今や巧遅拙速の世界となり、競合相手より、いかに一歩早く踏み出せるかが力の差となって表れるようになった。

例えば、当社は2004年にイギリスの保険大手アヴィヴァからアジアでの損保事業を買収した。投資額は約500億円と当時、損保業界では最大規模だった。ブランドが変わると顧客離れが起きはしないか、現経営陣の協力が継続して得られるかなど、リスクも想定されたが買収に踏み切った。一歩遅れていたら、ASEAN地域で保険料収入トップという今のポジションは得られなかっただろう。先行企業に競合企業がすぐに追随する競争激化の時代には、常に一歩早く踏み出し続けない限り、勝ち抜くことはできない。

そんな時代に生きるリーダー人材には、次の5つの力が必要だ。第一に「自分の価値観を持つ」。まわりに左右されない「ブレない軸」といってもいい。価値観が不明確で軸がブレるリーダーには誰もついてこない。「自己の価値観」を中核として、「決断する力」「スピード」「イノベーション力」「コミュニケーション力」が結びつく。

巧遅拙速を実行するには、まず、決断する力のスピードを高めなければならない。私の場合、決断を早めるために実践してきたのは「最悪を想定する」ことだった。手がける案件についてリスクファクターを洗い出し、最悪の事態を想定して、それが許容範囲内であったら決断する。例えば、ある会社に投資するとき、将来性や成長性を評価するが、もしその会社が事業に失敗しても、予想される損害が時間軸も含めて、許容範囲内であれば投資を行う。

それには必要な情報を収集しなければならない。情報力で重要なのは「事実」の向こうに「真実」を見抜く力だ。例えば、業績の数値は「事実」だが、それを生み出した要因は何か。単に市場の追い風を受けたのか、それとも、顧客ニーズを発掘する革新的な事業モデルと推進した人間の能力や意欲の高さか。「真実」をあぶり出し、総合して判断するとき後押しするのがブレることのない軸、自己の価値観なのだ。

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