金融庁と東京証券取引所は来年導入を目指す上場企業に対する企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を年内にまとめる。企業統治強化は安倍晋三政権による成長戦略の柱であり、11月25日開催の有識者会議は企業に利害関係のない独立した社外取締役を2人以上選任すべきなどの案を提示した。海外投資家からわかりにくい日本企業の経営の透明性を高める狙いで、外部の意見を事業戦略に反映し経営効率化も促す。指針は強制力がないにしても、現状でも社外取締役探しに苦しむ企業は早急な対応を迫られる。

指針のベースは経営陣に社外人材を迎えることで経営を効率化する考え方で、ROE(自己資本利益率)の向上などにつながる期待がある。企業統治は当初、不祥事の再発防止など防衛色が色濃かった。指針は攻めの経営に活用する点で従来手法から大きな転換点となる。上場会社の社外取締役を巡っては東証がすでに1人以上の選任を努力義務とし、今年6月改正の会社法も1人以上の設置を促しており、複数選任を掲げる指針は企業に一段の経営変革を求める。言い換えれば、企業が稼ぎ出した儲けを内部留保に積み上げる姿勢を社外の目でチェックし、資本、経営の効率化を引き出す狙いがある。

安倍政権は300兆円を超える企業の内部留保を切り崩し、設備投資や賃上げに振り向け、デフレ脱却に向けた「経済の好循環」を実現したい意向だ。

実際、安倍政権は復興特別法人税の前倒し廃止や法人関係税の減税で「賃上げの原資は与えた」(甘利明経済再生担当相)として、今春闘で企業に賃上げを迫った。その意味で、指針の意図は規制により内部留保を切り崩し、経済の好循環につなげるレバレッジ(梃子)効果狙いの“圧力”がみえみえだ。

消費税再増税を先送りし、法人実効税率を数年で20%台に下げる以上、これ以上の企業優遇は許されない。麻生太郎財務相もこの点は「減税が内部留保に回るなら意味がない」と再三、企業を牽制してきた。アベノミクスの「第三の矢」である成長戦略は総選挙で尻すぼみ、その意味で企業統治強化はその延命策にもみえ、経済の好循環はすべて「企業頼み」というアベノミクスの本性も透けてみえる。