奈良雅弘氏が分析・解説

同じ「束ねる」でも、個々人の認識や感情にはそれほど触れず、良好な環境をつくることで束ねていく「環境アプローチ」というべき方法も存在する。

野中氏の場合、社員の誰もが自然と束ねられていく仕組みをつくる発想が徹底している点で特徴的である。自由と公平を提供し、全員が「ここが自分の会社」と心から思える環境をつくっていけば、それだけで人は十分に主体的に、創造的になれる。そういう信念のもとに経営している。

社員を伸び伸びとさせれば、社員のほうから束ねられてくれる――。そんな発想があるように思う。

アール・アンド・イー合同会社代表 奈良雅弘 
1959年生まれ。東京大学文学部卒業。人材育成に関する理論構築と教育コンテンツ開発が専門。著書に『日経TEST公式ワークブック』(日本経済新聞社との共編、日経BP)がある。
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