2010年11月21日(日)

作家 姫野カオルコさん

ビールは揚げ物がきてから頼み、刺し身は最後に食べるのが私の流儀

PRESIDENT 2010年11月15日号

構成=江藤詩文 撮影=久間昌史、川隅知明
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姫野カオルコ

1958年、滋賀県生まれ。90年、スラップスティック・コメディ『ひと呼んでミツコ』で単行本デビュー。一見幸せな結婚の実態をシニカルに描いた『結婚は人生の墓場か?』、介護生活を送る人の心の澱をすくいとった『もう私のことはわからないのだけれど』など幅広い作風で男女を問わず熱烈に支持される。『受難』『ツ、イ、ラ、ク』『ハルカ・エイティ』『リアル・シンデレラ』は直木賞候補作。デビュー以来「アイスクリームやシュークリームが嫌いな女性もいる」と小説やエッセイを通じて訴えている。


 

人に教えたくない店というコーナータイトルからして、人に教えたくないんですから、みなさんいちばん大切な店は残して、それ以外を教えているわけじゃないですか。でもわたしは、これぞ本当に誰にも教えたくない店なんです。ここ「舟武」は、第六感にピンときた店。我ながら、ただ歩いていただけでよく見つけたと思います。

ここでは座るなりアジフライを注文します。きたところで、おもむろにビール。ここのアジフライは、ふかふかの衣の甘味が先にきて、次にアジ特有のほろ苦さが口中にふわっと広がり、ビールに合うんです。

よく、席に着くなり「お飲み物の注文を」と言う店がありますが、言語道断。会席料理なんかだと、先にさっぱりしたものが出て、揚げ物が出るのは最後ですよね。刺し身も、先に白身を食べてから赤身など味の濃いものを食べろと言う。逆だろ、と思いませんか。わたしは、まずビールで揚げ物を食べたい。そして、お酒もおなかも満足して、あと一杯だけというところで、白身の刺し身にポン酢なんかつけて食べたい。わたしはわたしのやりかたでやるからほっといて、と言いたくなります。

その点舟武は、どこをとっても本当にいい店なんです。味よし、気前よし(量が多くて値段が安い)、接客態度よし、トイレも男女別できれい。ただ一点、喫煙可なのが玉に瑕です。禁煙席を設けても、店舗の構造上あまり意味がなさそうなので、禁煙デーがあるといいのにと願っています。

もう一軒、「ティファニー」は、わたしの出身地である滋賀県が誇る近江牛を食べられるレストランです。近江牛は流通のシステム上、地元だから安いというものではありません。ただ、精肉店が経営しているので一括仕入れができることと、都心から離れるほど店舗の運営コストが抑えられることから、東京の真ん中よりは安く食べることができます。「近江で近江牛を食べた」という風情を味わうには、高くても必ず近江牛を使った料理を選んでください。

ティファニーをおすすめする理由は、駅から近い。これは大事ですよ。というのも京都といえば憧れの観光地ですよね。とりわけ紅葉や桜の頃ともなれば、大混雑です。ところが、忘れられがちなのですが、滋賀県で食事と宿をとる手もあるんです。京都から大津はたった2駅、近江八幡までだって新快速に乗れば約30分です。駅の近くには、手頃なビジネスホテルもあります。京都観光をしたら、電車でさっと移動して近江牛を食べ、翌日は近江八幡を観光してはいかがでしょう。近江八幡には、八幡堀やW.M.ヴォーリズの建築など、見所がたくさんありますから。

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