2014年7月22日(火)

リニア中央新幹線「9兆円プロジェクト」の採算

大前研一の日本のカラクリ

PRESIDENT 2014年8月4日号

小川 剛=構成 市来朋久=撮影 AP/AFLO、AFLO=写真
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ケネディ駐日米大使も実験線に試乗

東海道新幹線の開業からちょうど半世紀、今秋にもリニア中央新幹線が着工を迎える。開業予定は2027年。東京(品川)-名古屋の約286キロメートル区間が最短40分で結ばれることになる。現行の「のぞみ」で約1時間半だから、50分も短縮される。さらに45年の開業を目標に、大阪までの延伸工事も予定されている。

総工費は名古屋開業までで5兆4300億円。大阪開業まで含めると約9兆円に上る。これだけの巨大プロジェクトを、建設主体のJR東海が1社で資金負担しようというのだ。

リニア中央新幹線に、日米の政財界は注目している。(AP/AFLO=写真)

「自分で金を出すのだから、政府や役人に口を出させない」とばかりに自前でのリニア建設を推し進めてきたのがJR東海のドン、葛西敬之名誉会長である。葛西名誉会長といえば応援団長を自任するほど安倍晋三首相に近しい財界人だ。

JR東海はアメリカにもリニア新幹線を売り込んでいるが、安倍首相はオバマ大統領との会談でこれを強力にプッシュしている。これを受けてケネディ駐日米大使も甲府にある実験線に試乗している。国内のリニア建設に関しては、JR東海が土地を取得する際の税金(不動産取得税と登録免許税)をゼロにするなど、政府は税制面での優遇支援をすでに決めている。自前のプロジェクトと言いながら、政府・与党のヒモがガッチリ付いているのだ。

そうした状況を見ている限り、JR東海による民間プロジェクトであるはずのリニア中央新幹線に、先々、税金が投入される可能性は否定できない。南アルプスの山岳地帯を貫くトンネル工事はかつてない難工事が予想されるし、長いトンネル内で地震や事故が起きた場合の安全対策など未解決の問題、環境問題などへの影響で建設コストがどこまで高騰するか見当がつかない。

長期金利の上昇リスクも常に付いて回る。借入金が膨らんでJR東海が資金負担に耐えられなくなれば、政府が肩代わりするしかない。また大阪までの延伸を急がせることを政治的に迫れば国策プロジェクトになり変わって、血税が注ぎ込まれるわけだ。

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