「とにかく、だるい」 主婦Aさん(43歳)

定期健康診断で来院したAさん。
何か気になることはありますか? と聞くと「最近疲れやすいんです」と言う。
問診をしていくと、6カ月前から、続いているという。
そのほか「日中、家事を一通りこなすと、すぐに横になりたくなるんです。
なにかよくない病気でしょうか」と不調を訴えた。

だるさなら、私もよく感じる。40代女性なら誰もが感じる症状だろう。しかしAさんは日常生活に支障があるようだ。可能性がある病気は、うつ病や貧血、甲状腺機能低下症、更年期障害。Aさんは血色がよく、むくみもなく、生理も順調だったので、後者の3つは可能性が低い。

一方でAさんには「やる気の低下」「気持ちの落ち込み」という、うつ病の症状が当てはまった。問診をしていくと「小学生の息子の成績のことで悩みは尽きない」「些細なことで子供に怒鳴ってしまう」というのだ。

しかし「睡眠はとれていますか?」という質問に、「時間があればいくらでも眠れます」とニコリと言う。私は「おや?」と思った。うつ病は早朝に目覚めてしまい眠れなくなるという特徴がある。そこで「何時に寝て何時に起きますか?」と尋ねると、「朝は弁当作りのため眠い目をこすって5時に起き、夜は夫の帰宅が遅く、就寝は深夜1時」と言う。Aさんの睡眠時間は1日4時間しかない。うつ病ではなく、慢性睡眠不足がだるさの原因だった。

しかしAさんには自覚はない。Aさんのような自覚がない慢性睡眠不足の主婦は実は大勢いる。

「慢性睡眠不足は肩こり、頭痛、繰り返す風邪ばかりか、不眠症やうつ病、高血圧や心臓病など、大病へ発展することがあるんですよ」と私が説明すると、驚いた表情でAさんは言った。「短い睡眠は家族のためなので仕方がないことなんです!」