2014年7月9日(水)

健康診断の結果はどの程度信用していいか

知って安心、幸せを呼び込む全課題

PRESIDENT 2014年1月13日号

医学博士 中原英臣 構成=山本信幸
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健診結果は受診日の「日記」にすぎない

企業には1年以内ごとに1回、従業員に対して定期健康診断を実施する義務が課せられています。受診をさぼると、会社から何度も注意されるはずです。そこまで強制されている健康診断(任意の人間ドックも含む)の検査項目の多くに医学的根拠が薄く、病気の発見にほとんど役立たないとしたら、どう思いますか?

医学的根拠が薄いと結論づけたのは、健診を義務づけている厚生労働省自身が組織した「最新の科学的知見に基づいた保健事業に係る調査研究」班で、健康診断で実施されている代表的な24の検査項目のうち心電図測定、胸部X線、コレステロール検査など16項目は「病気の予防や死者の減少という視点では、有効性を示す根拠が薄い」と結論づけています。心電図測定は虚血性心疾患の発見には無意味。胸部X線は肺がんの発見に有効との証拠なし。コレステロール検査はコレステロール低下には役立つが心筋梗塞の予防には有効との証拠なし。尿検査も糖尿病の発見には不適切、腎不全を防ぐ証拠はない。尿検査は古い検査方法で、糖尿病の可能性を探る目的ならヘモグロビンA1c(HbA1c)などを行うべきなのです。健診結果を信じていいのは血圧、身長・体重、飲酒、喫煙、うつ病、糖負荷試験だけ。

ここではっきりさせておきますが、個人にとって健診は意味があるのかと問われれば、検査時点の体の状態がわかるし、安心も得られるという意味で「ある」と答えてもいいでしょう。でも、国が国民の健康状態を維持して病気を減らすという目的で巨額の税金を投入して行う制度としての意味は、「ない」と答えるしかありません。

健診結果に問題がなくても油断は禁物です。統計上は健診後1年程度はおおむね健診時点の健康状態が維持されることになっていますが、統計上の結果と個人の発病には何の関係もなく、健診直後に発病するケースはたくさんあります。健診結果は健診を受けた時点の「日記」(記録)程度の意味しか持ちません。

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