朝晩の通勤や通学で乗る満員電車。吊り革や手すりにすら掴まれない場合も多く、他の乗客の体を支えにしつつ、揺れに耐え続けるしかない。

乗客の快適性の目安にすぎない電車の「定員」
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乗客の快適性の目安にすぎない電車の「定員」

このように過密状態の電車は、「定員オーバー」であり、放置すべきではないものに思える。しかし、電車では、エレベーターのように、重量超過を感知してブザーが鳴るわけではない。乗用車のように、定員オーバーの運行で警察に検挙されたという話も聞かない。満員電車に、法律上の規制はないのだろうか。

「鉄道の場合、事業者が定員を超えて客を乗せたとしても、違法ではない」と話すのは、鉄道に関する法律問題に詳しい佐藤健宗弁護士(兵庫県弁護士会)。

電車の車両にも、座席の長さや床面積などをもとに、「定員」が設定されるが、これは、乗客にとって快適な乗車人数の目安を示すもの。安全上の観点から、これ以上乗ってはいけないという意味での「定員」は存在しないのだ。これは鉄道営業法が適用される他の乗り物、たとえばモノレールや新幹線、ケーブルカーやロープウエーについても同じである。

しかし、車両が人で溢れて重量が増せば、ブレーキや車体バランスに影響を及ぼすだろう。チカンやスリなどの犯罪も誘発している。この点について佐藤弁護士は、

「過去に、定員オーバーが主な原因で鉄道事故が起こった例がないため、電車は重量オーバーに対して比較的安全な乗り物だと考えられているのではないか」

と話す。とはいえ、仮に乗客が少なかったなら回避できた鉄道事故は「たくさんあるだろう」(佐藤弁護士)。鉄道事故の副次的要因となりうる定員オーバーについて、規制する法律が存在しないのは不自然にも思える。

更に調べると、不思議な条文があることがわかった。鉄道営業法15条2項には「乗車券ヲ有スル者ハ列車中座席ノ存在スル場合ニ限リ乗車スルコトヲ得」とある。この規定は、定員以上乗ってはいけないどころか、飛行機などと同様「客は、空席がなければ乗車してはいけない」と読める。