現下では3種の葬儀における厳密な定義はなく、便宜上、下表の通りに扱われているにすぎない。

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故人を再認識できる「従来型」、費用を最小限に抑える「直葬」

いずれの葬儀にも長所と短所があり、どの形態が最良かは送る側(遺族)と送られる側(故人)の関係性に加え、縁故者との関わり方を考慮する。当然、本人の希望があれば可能な限り順守すべきだ。ただし一般に、故人の年齢と集まる人の数は反比例する事実から、高齢になるほど小規模化する実態は否めない。

昨今主流となっている「家族葬」も、その名の通りに家族や一部の血縁者のみの数人~数十人規模で行う場合もあれば、他に参列してほしい対象者へも告知するケースや、故人との別れを偲びたい人なら“来る人拒まず”のオープン形式など様々で、従来型葬儀との境界線はより曖昧になってきている。

そして近年、首都圏を中心に急増し、地域によっては3割以上を占めるとされる「直葬」も、そのスタイルは多種にわたる。“直ぐに葬る”の語感から、死後は火葬場へ直行し、何の弔いもせずに火葬だけすますように捉えられがちだが、実際にはそうした“無葬”のみに止まらない。安置する自宅や葬儀会館の個室、あるいは火葬場にて、故人の身内や関係者が集い、短時間でも何らかの“別れの場”を設けるケースが少なくないからだ。

言うなれば、費用や労力、時間を極力抑えて行う“祭壇を設けない、ごく小規模な簡易家族葬”の扱いで、昨今は、こちらの“必要最小限葬儀”のスタイルが台頭してきている。

華美な祭壇や宗教儀礼に価値を感じない人も増えており、支持される背景には「無用なものは省く」「価値を感じられないものには費用をかけない」といった、現代人の価値観が潜む。事実、医者や弁護士など富裕層での利用者も多く、経済的理由から「直葬“しか”できない」遺族よりは、本人や家族の意思で「直葬“が”いい」と望む人が増えているのが実状だ。