2014年4月24日(木)

13人に1人の難関も突破!お嬢さま女子大生や介護職がタクシードライバーを目指す理由

プレジデント探検隊女子部!

PRESIDENT Online スペシャル

著者
塚本 裕子 つかもと・ゆうこ
フリーライター

塚本 裕子出版社書籍編集部、雑誌編集部勤務を経て、1998年フリーに。「本づくりのお手伝い」と称し、紙媒体の現場に何かと顔を出す。お手伝い可能な分野はビジネス、脳科学、文芸など。2011年より京都で遊び暮らす“おひとり充”。日本酒と落語が好き。キモノ姿でよく町を歩いている。

塚本裕子=文
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フレックスタイムでノルマはなし

タクシードライバーといえば男性をイメージする人も多いだろう。

実際、女性のそれは希少で、全体のわずか2.3%(6699人/29万4744人中)しかいない(※2013年3月末現在/全国ハイヤー・タクシー連合会調べ)。

全国で女性ドライバー数がいちばん多いのは東京都842人。次いで神奈川県624人、3位が北海道614人(同連合会調べ)となっている。

ところが、そんなタクシー業界の概念をくつがえすような小さなムーヴメントが、いま起きている。

「ドライバーはすべて女性」という会社が昨年7月、京都市(山科区)に誕生し、話題になっている。

「観光都市・京都の案内人になるべく猛勉強中。学ぶことが多いのは幸せ」(久米優里さん)

その名も『みとちゃんタクシー』。“女性のぞうさん”マークの行灯が目印だ。地道に根を広げて、現在ドライバーは14人を数える。全員が未経験からの中途入社で、年齢層は20-50代の、うち半分が30代だ。久米優里さんもそのひとり。

「運転席の私を見て『あ、女性なんや』と一瞬驚きの顔をされる、と同時に喜んでくださるお客様が多いですね。『女性やし(※京都特有の言い方で「女性だから」の意味)、ラッキー♪』と、まるで“当たり”くじでも引いたかのよう(笑)。女性やし安心、ほっとする、しゃべりやすい、いつも来てほしい、などと言われると、この仕事をやっていて本当によかったとうれしくなります」

女性旅行客が観光地を巡るときや、妊婦の客が産婦人科へ行くとき、両親が働いているあいだに子供が塾へ通うときなどにも、女性ドライバーにお願いしたいという声は多い。

「女性やし――」と言われるような、女性ならではの工夫を何かしているのか。その問いに久米さんは「ドライバーとして大切なことを忠実に守っているだけ」としながら、「(男性に比べて)運転が丁寧ですね、とはよく言われます」。

その丁寧さの背景には、どうやら同社独自の給与システムがあるようだ。フレックスタイム制に加えて“時給制”を敷いている。ノルマも一切ない。歩合制が一般的とされるタクシー業界で、これはかなり珍しい、というよりは異例だ。同社代表取締役、事業統括部長の杉崎由佳さんはその理由をこう語る。

「歩合制では売上げ先行になって、客数や走行距離を積むことに意識がいきがちです。『早く送り届けて次へ』という気の焦りはスピードにもつながる。弊社のドライバーにはそうではなく、『遠くまで』でも『ちょっとそこまで』でもまったく変わらず、お客様と過ごす“いま”その時間こそを大切に、その人の足となるのだという純粋な気持ちでサービスに務めています。お客様との時間を丁寧に扱うことは、結果的に運転の丁寧さを生むことになるのでしょう」

この丁寧さは随所で生かされる。杉崎さんによれば、同社ドライバーの求人に応募してくる女性には介護職の人が多いのだという。

「話を聞けば、将来性や社会的意義を考えて介護職の資格をとったものの、いざやってみると重労働で、体力的にきつくて続けられないといいます。一方の私たちは高齢者にも安心して乗っていただける、家族に『ちょっとそこまで(病院や買い物に行くのに)乗せてくれない?』と頼む感覚で呼んでいただけるタクシー会社を目指している。彼女たちの基にある、“高齢者や困っている人たちのお手伝いをしたい”という気持ちが、弊社のそういう考えと合致するのかもしれません」

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