新卒女子大生の応募者、13年2人→14年69人

では、大学生の意識はどうか。業界最大手の「国際自動車」(東京都港区)が昨年から大学新卒者向けにドライバーの大量採用を行っている。

2013年春採用の応募総数は75人(男性73、女性2)だったが、14年春は443人へと6倍に増加。それに準じて女性の志望者も69人に跳ね上がった。この69人のうち入社したのは9人(男性104)。つまり新卒女性タクシードライバーは13人に1人しか採用されない難関を通過した優秀な人材ということになる。

では、その入社の動機やいかに。なにゆえ、男社会の業界に飛び込んだのか。

同社企画・広報によれば、採用した女子大生ドライバーの多くが、「タクシー会社はサービス業であり、女性の力が生きる職業としての可能性がある」「ホスピタリティの考えに共感をし、“おもてなしの心”を発揮したいと思った」 といった考えを持っていたそうだ。

ちなみに、入社した女子大生の主な出身校は、大妻女子大学や実践女子大学など「良妻賢母」の育成を起源とした伝統ある大学。現在、行われている来春入社向けの就活では、「こうした女子大だけでなく、一流大学などからのエントリーも増えるのではないか」と業界関係者は語る。

前出・久米さんはこう解説する。

この「女性のぞうさんマーク」が女性ドライバーの目印

「女性が自分のライフスタイルに合わせて働き方を選べるのもこの仕事の魅力です。フレックスなら家事や子育てとの両立もしやすい。子供が学校に通う時間帯だけ働き、手が離れたらもっと長い時間で、というように長い目で仕事を考えていける。そして何より、“私が”運転する、ということがプロの職業人としての大きなやりがいになると思います。車はその大切な“相棒”です」

タクシードライバーの経験をすれば、一度やめても、再び職場復帰が比較的簡単にできる。つまり「一生働くことができる」ことも大きなメリットだという。 

少子高齢化は、将来的に女性の労働力がさらに必要となることを意味する。男性が中心だった社会に、いま女性たちは自分たちの新しい可能性を求め、大きく切り込もうとしている。

個人が家庭と仕事を充実させてこそ企業は活性化し、やがて社会が発展する。そのサイクルの一端を、みとちゃんタクシーや国際自動車を含む、女性タクシードライバーを採用する会社が担っているのかもしれない。

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