軽自動車メーカーが繰り広げる激しい低燃費競争。抜かれては抜き返しの裏に、各社技術陣のどのような努力があるのだろうか。

整数で勝たなければ

図を拡大
ダイハツVSスズキ、軽の燃費競争(photolibrary=写真)

「リッター40キロという目標に対し、今できる見通しがあるのかと言えば、正直まだ何もありません。具体的な方針も含めてです。ただし、技術開発には目標が不可欠。35を達成した今、スズキが視野に入れなければならないのは40なのです。(2011年に)ミライースの30に対しアルトエコが30.2と、0.2差の小数点で勝ったとき、本当は我々も悔しかった。やはり、整数でやり抜かなければ」

スズキの技術部門のトップである本田治副社長は話す。35や40といった数字は軽自動車の燃費性能を表したものだ。軽自動車の需要拡大と相まって、今、低燃費技術をめぐる競争が激化している。

スズキは13年12月発売の軽自動車「アルトエコ」で、リッター35キロを達成。現時点で、これがガソリン車としては最高の燃費性能である。

電気エネルギーを動力に使うハイブリッド車(HV)のトヨタ「アクア」は37.0キロ、ホンダ「フィットハイブリッド」は36.4キロであり、これらと比べてもそう遜色はないレベルだ。

そこで、スズキは次の目標として40キロと設定した。ただし、「いつまで」は公表していない。

軽自動車の規格は、全長3400ミリ以下、全幅1480ミリ以下、全高2000ミリ以下、排気量660cc以下、定員4人以下、貨物積載量350キログラム以下。この規格に改定されたのは1998年10月。小型車と同等の安全衝突基準を採用するためボディーが大型化されたが、排気量は変わらなかった。

図を拡大
ハイブリッド並みの燃費を実現

大きくなった車体に対しエンジンが非力だったため、当時の軽自動車はトヨタ「ヴィッツ」など小型車と比べ燃費性能が劣っていた。だが、規格改定から15年が経過した昨年、車体の軽量化やエンジン改良などを積み重ねてHV並みの燃費性能を実現する。

もっとも、軽の低燃費競争を最初に仕掛けたのはダイハツ工業だった。11年9月に発売した「ミライース」によってである。06年12月発売の7代目「ミラ」の燃費性能は、10・15モードで27.0キロだった。これをミライースはより実際の燃費に近いJC08モードで30キロに上げる。これは、約40%の燃費向上に相当した。