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ホンダが3強入り。軽自動車メーカー別シェアの推移

ホンダはまず11年12月発売の「N-BOX」をもって、歴史が浅く競合車の少ないスーパーハイトに地歩を固めた後、ワゴンRとムーヴという強敵がいるハイトに「N-WGN」を13年11月に投入する作戦をとった。2年間でシェアを11.1ポイントも上げ、ダイハツとスズキの2強に影響を与えている。

4位は日産自動車でシェア8.8%。5位は三菱自動車工業の4.0%。

燃費戦争の勃発と、燃費よりもデザインを重視したN-BOX発売とは同じ11年末。13年の軽市場211万台に対し、11年は152万台。2年間で59万台(38.9%増)も市場が拡大したのだ。

ただし、昨年末には軽自動車税の増税が決まった。現在の年7200円が15年4月以降は1.5倍の1万800円となる。消費税が2段階で上がるのに加え、増税されるのだ。鈴木修は「(消費税が8%になる)14年の軽市場は厳しくなる」と話す。

一方、ナカニシ自動車産業リサーチ(東京都千代田区)の中西孝樹・代表兼アナリストは、「消費増税も軽自動車税の増税も、軽自動車市場にそれほどの影響を与えないのでは」という見方を示す。「登録車の多くはグローバル車として開発するから、日本の消費者にとって面白い車がやや欠けています。軽自動車は日本の消費者を向いてつくっているから国内に適した商品力があり、消費者の支持は高い。スズキ・ハスラーのような面白い軽のヒット商品も、生まれ始めている」(中西)。

今、軽には商品力が求められている。低燃費技術は、そんな軽自動車にとっての中心的な価値でもある。

100年の歴史で初めての組織体制

では、最初に30キロを突破したミライース開発は、どうやって成し遂げられたのか。「(上は)『本籍を移してしまえ』とおっしゃっていた。権限は君に集中させる。それと、(発売まで)時間はあまりない」。

技術担当役員からこう言われたとき、企画の見直しを命じられて絶望の底にいた上田は、闇夜に一筋の光が走るのを見る。そして、言葉が自然と溢れ出た。「これから、ダイハツの新しいものづくりのひな型を、必ずつくります!」と。09年12月、大阪府池田市の本社でのやり取りだった。