マーチン・エアクラフト社は昨年、有人飛行テストの認可を受けた。(時事通信フォト=写真)

『スター・ウォーズ』に登場する、背負い型飛行装置「ジェットパック」。“空飛ぶバイク”とも称され、世界中で実用化に向けた取り組みがなされ始めている。

ジェットパックとは、垂直離着陸機の一つで、ジェット機のように飛行するものや、1984年ロス五輪の開会式で使われた「ロケットマン」タイプのものなどがある。飛行時間は、ジェットエンジンで数分から10分、ダクテッドファン型(換気扇のように円筒のなかをファンが回るタイプ)だと30分程度だ。

最近では、富士山麓を飛行した「ジェットマン」(スイスのイヴ・ロッシ氏)がメディアを賑わせた。しかし、科学ジャーナリストの中村浩美氏は、「確かにすごい飛行だったが、自力の離陸はできず、着陸はパラシュート。挑戦・冒険の域を出ない」と話す。

では実用化への壁は。九州大学工学研究院准教授の東野伸一郎氏は、「現在の技術で安全性を確保しようとすると、とても高価で重いものになってしまうだろう。これは現在の無人機にも共通する悩み」(東野氏)と話す。

東野氏によると、これがある程度克服されれば、レジャーや宅配、空撮事業、災害時の孤立地域への救助手段になる可能性もあるという。ニュージーランドでは、マーチン・エアクラフト社が航空当局の試験飛行許可を得て、今年早期にダクテッドファン型ジェットパックの有人試験飛行を予定している。同社のDeb McPherson氏は「我々は、開発段階から商業生産へと移行しつつある。最初は救急サービス市場をターゲットとし、来年リリースを狙っている」と語る。

(時事通信フォト=写真)
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