急増する「がん」の経験者

「がん」といえば治療に目がいきがちだが、治療は「がん人生」の一部にすぎない。患者本人や家族、友人、ケアに当たる人などの関係者たち(がんサバイバー)が診断や治療の後を生きていくプロセス全般を「がんサバイバーシップ」と呼ぶ。

この言葉が広まったのは2000年代以降と比較的新しい。がんの生存率が向上しているのに、「健康な人と同じ条件で就職できない」「職場で一線から退かざるをえなくなった」というケースが後を絶たない。これは、医療現場だけではケアしきれない。がん経験者が1300万人を超える米国では、がん経験者に対する差別の禁止や就労面のフォローが国家的に進められている。

日本でも、15年末にはがん経験者数が533万人に達するという推計もある。12年には「第2次がん対策推進基本計画」(厚生労働省)が発表され、事業者に対しても「働き続けられるような配慮」「職場や採用時に差別しない」ことを呼びかけている。

「がんで一時的に休んだとしても、働く力が戻る人は多い。日本人の2分の1ががんになる現状において、がんに罹った人を解雇したり戦力外にするのはもったいないということを、経営者には知っておいてほしい」と国立がん研究センターがん対策情報センターがんサバイバーシップ支援研究部長の高橋都氏は強調する。

「同時に、セルフマネジメントも必要。自身の病気に関する説明力を高め、周囲からどう支援を引き出すか。社会的支援を整えることと同時に、自身の対応力を磨くことも大事ではないか」(高橋氏)