2013年10月30日(水)

ソニーショックから10年。「復活」は本物か

PRESIDENT 2013年11月18日号

著者
瀧本 哲史 たきもと・てつふみ
京都大学客員准教授、エンジェル投資家

瀧本 哲史

東京大学法学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科助手を経て、マッキンゼー&カンパニーへ。主にエレクトロニクス業界のコンサルティングに従事する。3年の勤務を経て投資家として独立。著書に『僕は君たちに武器を配りたい』『武器としての決断思考』などがある。

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答える人=瀧本哲史(京都大学客員准教授、エンジェル投資家)
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平井社長の新戦略で商品は面白くなった

最近ソニーがちょっと面白い。今まで、ネットで話題となる商品というとアップルの新製品かスタートアップ企業の変わった商品と相場が決まっていたのだが、すこし傾向が変わってきている。私自身、数年前に携帯型PCの「VAIO type P」を買って以来、ソニー商品を購入していなかったが、最近は、タブレット型PCの「VAIO Duo」、スマートフォン「Xperia Z Ultra」と立て続けに買っている。また、スマートフォンと組み合わせて使う「レンズスタイルカメラ」も話題だ。これはファインダーのないレンズだけのカメラで、Wi-Fi経由でスマートフォンの画面をみながら撮影するというなかなか珍しい発想の商品である。

単純に発想が面白いだけではない。これらの商品はソニーの新しい戦略を反映させたものでもある。代表執行役社長兼CEOの平井一夫氏は、就任以来、「One Sony」というキーワードを強調している。これは、部門間の垣根を取り払い、ソニー全体で商品を開発する体制を整えることだという。

たとえば、私が買った「Xperia Z Ultra」は高画質が売りだ。私はスマートフォンで映画をみる習慣はないが、試しに映画をダウンロードしてみると、飛行機や新幹線の中で見るには十分すぎるクオリティであり、スマートフォンで映画をみてもいいと思わせるものであった。この高画質を支えているのが、「X-Reality for mobile」という画像処理技術だ。これはソニーの液晶テレビの画像処理技術「X-Reality」を水平展開したものである。それ故に画質が高いというのも納得がいく。

また「レンズスタイルカメラ」はデジカメとスマートフォンという2つの市場を繋げるものだ。他社のスマートフォンでも使えるため自社の市場を壊すリスクがあるが、全体最適の発想の商品だと言えるだろう。デジカメやスマートフォンで使われる「CMOSセンサー」でソニーのシェアは世界トップだ。テクノ・システム・リサーチ社の2012年の調査によると、年間売上高のシェアでソニーは31%と、14%のオムニビジョン、13%のサムスンに差をつけている。どこかのレイヤーで勝者になり、その優位性を他の事業でも利用するが、無理な囲い込みは行わないという戦略である。

とはいえ、これで、「ソニー復活」と考えるのは早計である。そもそも、今のソニーの収益構造がどうなっているかを冷静に分析してみる必要がある。2012年度の有価証券報告書のセグメント情報を元に読み解いてみよう。

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