ジョブズも憧れたブランド力の行方は

さらに言えば、「面白い商品」が、ユーザ目線から見て本当に「良い商品」かは、なお疑いの余地がある。

10月某日、私は銀座のショールームを訪問して、話題の「レンズスタイルカメラ」を試してきた。なるほど、興味深い商品だったが、1つ致命的な欠点を発見した。それは、カメラとスマートフォンの接続認識に時間がかかりすぎることである。これでは撮影したいときにすぐ撮影できない。一般に、コンシューマ向けの商品は使用習慣をつけさせて、手放せなくさせることが重要だ。それは利用のたびにある種の快楽を与えることだと言い換えられる。たとえば一瞬で起動するPCに慣れてしまえば、起動に何分もかかるPCには戻れない。その点、このカメラでは利用のたびにストレスを与えてしまうため、使用習慣をつけさせにくい。つまり、技術や発想においては「面白い商品」ではあるが、消費者の利用状況とはあまり合っていない。

ショールームの体験コーナーで来場者をしばらく観察していたが、商品に強い関心を示しているのは一部のマニアだけだった印象だ。さらにまずいことに体験コーナーに置かれている数台のうち、いくつかが故障か電池切れのために動作しないようで、手にしたユーザの何人かは実際に撮影してみることなく立ち去っていた。そして、最も皮肉なことは、その体験コーナーの背後で流されているイメージビデオの完成度の高さである。