2013年10月25日(金)

オリンピックバブルに騙されてはいけない

大前研一の日本のカラクリ

PRESIDENT 2013年11月4日号

著者
大前 研一 おおまえ・けんいち
ビジネス・ブレークスルー大学学長

大前 研一

1943年、北九州生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で、博士号取得。日立製作所を経て、72年、マッキンゼー&カンパニー入社。同社本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年退社。現在、自ら立ち上げたビジネス・ブレークスルー大学院大学学長。近著に『ロシア・ショック』『サラリーマン「再起動」マニュアル』『大前流 心理経済学』などがある。 >>大前経営塾

執筆記事一覧

ビジネス・ブレークスルー大学学長 大前研一/小川 剛=構成 AFLO=写真
1
nextpage

長距離通勤は人生を消耗させる

日本の大都市の特徴として、都市の西側のほうが東側よりも地価が高くなるという傾向がある。東京・大手町からJRや地下鉄で15分、30分、1時間というふうに同心円を描くと、同じ時間・距離でも西側と東側では土地の値段が4倍くらい違うことがわかる。例えば、東京屈指の高級住宅街である大田区田園調布は、都心まで電車で約40分、車でも1時間かかる実に“不便な場所”である。逆に東京の東側、湾岸方面は地下鉄で15分ぐらいの“便利なエリア”でも、倉庫街や船着き場のままであったり、工場やトラック基地に使われている場所だったりする。

こうした「西高東低」の傾向は、今後大規模開発によって十分に変更可能だと私は考える。

例えば、これから東京都内に家を買おうというビジネスマンが、一切のバイアスを取り除いて通勤の利便性だけで物件選びをするとすれば、絶対に“西側”は選ばないだろう。サラリーマンにとって「通勤時間」はとても重要だ。長距離通勤というものが、人生の中でどれだけの時間を浪費し、日々疲労を蓄積させ、人生を消耗させていることか。片道45分、往復90分で40年のサラリーマン人生とすれば、90分×220日×40年=1万3200時間(550日)。

もし片道45分の通勤時間を15分でも短縮できれば、人生を有効に使える時間は、大幅に増加する。通勤時間を価値換算してみるといい。時給3000円のサラリーマンなら、1万3200時間の通勤時間は約4000万円分に相当するのだ。

そのように合理的に発想するサラリーマンが増えてくれば、東西を問わず、電車や車で都心にアクセス至便なエリアの価値はいずれ上がってくるはずである。だが、実際には東京の東側や湾岸エリアはそうなっていない。それは、かつて田園調布を開発した渋沢栄一や阪急電鉄創業者の小林一三、東急電鉄創業者の五島慶太のように長期的なビジョンを持って大規模開発する実業家やデベロッパーがいないことも大きな理由だろう。

逆の言い方をすれば、事業家の視点で見れば、東京の東側、湾岸エリアは狙い目といえる。特に私がロケーション的にも抜群と思うのは築地、勝鬨、晴海のベイエリア一帯だ。ここは東京に唯一残された最大かつ最高の大規模再開発ポイントである。

米サンフランシスコの「フィッシャーマンズワーフ」、マンハッタンのダウンタウンにある「バッテリーパーク」、ロンドンの東部の「カナリーワーフ」、オーストラリア・シドニーの「ダーリングハーバー」など、寂れた港湾が再開発で生まれ変わり、世界中からヒト、モノ、カネを呼び込む成功例はいくつもある。世界中の港湾再開発を私はこの目で見てきたが、築地、勝鬨、晴海辺りのウオーターフロントも構想次第で大きく生まれ変わる可能性を秘めているのだ。

PickUp

「大前研一の日本のカラクリ」 バックナンバー一覧 »
関連記事一覧 »
キーワード