職住近接の24時間タウン

2020年東京五輪開催都市決定都民報告会(AFLO=写真)

私は千葉県木更津市から神奈川県横浜市の金沢八景辺りまでの東京湾岸一帯を再開発して、ウオーターフロント100万人都市を誕生させようという「湾岸100万都市構想」をかねてから提唱している。東京都下で中核になるのは、先述の築地、勝鬨、晴海エリアである。

築地市場が豊洲に移転して築地が空っぽになる前提で、築地、勝鬨、晴海エリアの再開発構想もすでに作ってある。

住宅街とビジネス街、商業施設が揃った職住近接の24時間タウンにする。ボードウオーク(遊歩道)でつなげば、銀座から歩いて帰ってこられる。大学もつくる。もともと築地は慶應義塾大学発祥の地だから、慶應義塾大学に都心回帰してもらう。シリコンバレーやボストンのように企業家やインキュベーター、学生がカフェで気軽に出会える環境を整えるのだ。

築地、勝鬨、晴海辺りの再開発構想を考えたのは、今から10年以上前のことだが、残念ながらこれを実現しようという推進力はなかなか出てこない。各方面に働きかけたこともあったが、石原都政で都知事がオリンピック開催地に立候補したために全部フリーズしてしまった。湾岸エリアの土地はオリンピック用に押さえられて活用できなくなったのだ。今回の20年東京オリンピック決定で、東京で1番有効な土地が再び7年間、塩漬けにされることになる。

やれることといえば大会に向けて選手村と競技場を建設して、幹線道路を拡充するくらい。大会後、選手村は住宅地に転用されるそうだが、私が考えている一体開発構想とは程遠いものだ。

「お・も・て・な・し」で滝川クリステル氏は時の人に(AFLO=写真)

そもそも想定している“繁栄”の規模が圧倒的に違う。オリンピックはせいぜい大会期間中プラスアルファで世界中からヒト、モノ、カネを呼び込もうという話。しかし湾岸再開発のプロジェクトが目指すのは、世界中からヒト、モノ、カネ、情報が毎日やってくる、21世紀型の壮大な24時間タウンだ。東京オリンピックの経済効果は3兆円などと言われているが、私の構想とは経済効果のケタが違う。

20年の東京五輪招致成功は一時的なカンフル剤にはなるかもしれないが、かつて東京オリンピックをきっかけに日本が飛躍したような効果は期待できない。オリンピックのような国家的イベントが成長のきっかけになるのは、途上国においてだろう。本当に日本を活性化できるのは、東京の「西高東低」を是正するような大規模開発だ。投資や不動産購入もそういう大前提で判断すべきである。

特に液状化リスクが高い湾岸エリアに居を構える場合は、注意が必要だ。土質改良などの本格的な液状化対策が取られているか、液状化しても生活ができるライフラインや備蓄が確保されているかどうか、確認してほしい。

(小川 剛=構成 AFLO=写真)
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