JR東海が、2027年に開業をめざすリニア中央新幹線。完成すれば、最高時速500kmで東京-名古屋間を最短40分で結ぶ。去る9月中旬には、詳細な走行ルートと神奈川、山梨、長野、岐阜に設置される中間駅も発表され、注目度は一気に増した。そこで気になるのが、この大型プロジェクト開業後の経済効果だ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの加藤義人主席研究員は「手堅く見積もっても、50年間で10兆7000億円にのぼる。理由は、移動時間短縮による首都圏と中京圏の一体化で、仕事の効率化、生産性向上が期待できるからだ。やはり“時は金なり”で、ビジネスや観光などの分野を活性化させるだけでなく国際競争力の強化にもつながっていく」と話す。
こうした効果が表れるには2つの条件がある。1つが、スピードアップを享受できる地域。2つ目が産業集積の高い場所だ。当然、1番大きいのが東京都、次いで愛知県となる。産業別に見ると、東京ではサービス、金融系に集中し、愛知では製造業の生産額が伸びる。もちろん、産業に活力が出るのは大歓迎なのだが、同時に大都市間の均衡も望まれる。
また、リニアのメリットを一層高めるためには、沿線地域の整備促進が不可欠。加藤氏は「リニア駅がくる地域は、開業に先駆けて交通網の利便性をよくするなど、知恵の出し合いを急ぐべきだ」と主張する。実現できれば、品川、名古屋の両ターミナルだけでなく、甲府、長野といった中間駅周辺も相応に発展するだろう。
(ライヴ・アート=図版作成)