著者の異なる『孫子』の解説書を7~8冊読んだが、組織のリーダーの心得という視点で説かれた本書はごく自然に納得できた。構成員が知らず知らず動きだし、組織全体の“勢い”を生む仕掛けを説くくだりが興味深いが、その基底は精神論とは無縁の、人間本来の性や本能。たとえばこうした人心の機微を、従軍体験を通じて精神論の不毛をよく知る著者が丁寧に説明している。

孫武は大変なリアリスト。まず受注ありきで採算を二の次にしがちなエンジニアリングの従事者にとって、「まず(計算して)勝った後に戦え」「勝って利益が得られぬ戦いは無駄」といった多くの言葉は示唆に富み、月1回の社員向けのメッセージにもたびたび引用している。