日本人はなぜ投資下手なのか。ひとつの原因として私が思うのは、投資家に対するきちっとしたアドバイザーがいないことです。

日本の証券会社の営業マンや、銀行窓販の人たちは、アドバイザーでもなんでもありません。

私が以前、知人に頼まれてアドバイスをした方がいらっしゃいます。旦那さんが亡くなられて、遺産を相続された女性なのですが「では相続された金融遺産をちょっと見せてください」とお願いしました。実際に目の前にしてビックリしました。ぜんぶ投資先やリスクも似た類似商品でした。これではリスクの分散になりません。

証券会社も銀行窓販も、全く同じような商品を、資産分散も何もせず、1人の人間にどんどんはめ込んでいたのです。お客さんのことを考えたら、この商品をこれ以上この人に売ってはいけない。そう考えるのが本当のコンプライアンスだと私は思うのですが、そんなことは何もされていない。私はゾッとしました。もちろん相当解約させていただきました。

これが日本の証券、または銀行の、個人の客に対しての営業のやり方なんです。自分たちが売りたい、今売らなくてはならない商品在庫を捌く。それしか頭にありません。本当にお客さんのことを考えてアドバイスができるところはないのではないかと思います。証券会社や銀行がこのスタンスでは、日本で投資家が育ちにくいのも無理はないと私は思ってしまいますね。

著述家 藤原敬之
1959年、大阪府生まれ。農林中金、クレディ・スイス、日興アセットなどでファンドマネジャーとして活躍し、著述家に。著書に『日本人はなぜ株で損するのか?』。
(構成=宮上徳重 撮影=奥谷 仁 写真=PIXTA)
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