2013年9月26日(木)

発売2年で250万本!目がよい人のメガネ「JINS PC」

PRESIDENT 2013年9月16日号

著者
野口 智雄 のぐち・ともお
早稲田大学社会科学総合学術院教授

1956年、東京都生まれ。一橋大学大学院博士後期課程単位修得後、横浜市立大学助教授を経て94年から現職。2006年から08年まで、客員研究員としてスタンフォード大学経済学部で活躍。88年、『現代小売流通の諸側面』で日本商業学会賞を受賞。『水平思考で市場をつくるマトリックス・マーケティング』『なぜ企業はマーケティング戦略を誤るのか』など多数の著書がある。

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早稲田大学社会科学総合学術院教授 野口智雄=文
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ターゲットの拡大に合わせた3段階のプロモーション

ヒット商品の中には、用途を変更したり新機能を付け加えたりすることによって、まったく別種の商品ができ上がり、新規顧客を獲得することがある。

今回紹介するジェイアイエヌの「JINS PC」 は、メガネでありながら、視力矯正を主目的とするものではなく、眼精疲労の軽減を目指したものである。パソコンやスマートフォン、そしてゲームやテレビなどが発するブルーライトを効果的にカットするこの商品は、2011年9月30日の発売以来快進撃を続け、累計で250万本超もの販売量を誇っている(13年7月末現在)。

この商品の開発の発端は、実に興味深いものだ。それは同社代表取締役社長・田中仁氏の実体験に根差している。彼はメガネ・ビジネスを本業としながらも実は視力がよく、矯正のためのメガネを必要としない人だ。そんな彼が、10年ほど前からパソコンに向かうたび、やたらと目が疲れることを感じ始めた。仕事柄、大学病院や眼科学会の研究者との交流の多かった彼はある日、眼精疲労の悩みを専門家に相談した。すると、ブルーライトが原因なのではないかとの指摘を受けたという。

ブルーライトとは、波長が380~495ナノメートルの青色の可視光線である。これは、LEDディスプレーから発せられており、可視光線の中では、最もエネルギーの強いものである。もちろんブルーライト自体は、群青の空からも放出されており、それ自体が目の健康を害するものではない。しかし、その波長は可視光線の中では最も紫外線に近く、かつ上記の通りエネルギーが強いので、長時間これを浴び続けていると、眼精疲労を引き起こす可能性が高い。また、この光線には覚醒効果があり、就寝前に目に浴びると、体内時計を狂わせたり、睡眠の質に影響を及ぼしたり、そのことが原因となって仕事の効率が落ちることがあるのだ。

JINS PCは、この種の障害の改善を目指したものである。この商品はもとより、同社の商品づくりに貫かれているコンセプトはとてもユニークだ。社内では、「目のよい人がかけるメガネ」とはどういうものかについて常々議論がなされているという。このような逆転の発想の下、これまで花粉対策用の「JINS 花粉Cut」、ドライアイ向け用の「JINS Moisture」など独創的なメガネが開発されている。例えば、「JINS 花粉Cut」は、今年1月28日に発売し、わずか1~2カ月で完売。それも、昨年の約4倍の量を準備しておいたにもかかわらずだ。

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