最近、私が教えているビジネススクールの応募者が増えている。また、各種セミナーや企業の幹部向けエグゼクティブプログラムも盛況だと聞く。世間では、「経営学を学びたい」という機運が高まっているようだ。

しかし、自らのキャリアアップを目指したかつての「MBA(経営学修士)ブーム」とは質が違うように思える。今なぜ、経営学に関心が集まっているのか。「このままでは日本企業は駄目になる」と考え始めた人が多いからではないだろうか。

ひと昔前だったら、上司の背中を見て学び、それを踏襲していれば順調に昇給・昇格した。経営者も同じで、経営環境はさほど大きな変化に見舞われることはなかった。他社と同じような手を打つだけで、社長の椅子は安泰だった。

ところが状況は一変し、激変、激動の時代に突入した。ビジネスパーソンも経営者も、今までと同じやり方を続けることが大きなリスクとなっている。いつ、何に対して、どんな手を打つべきか。自分の頭で考え、臨機応変に実行しないと、会社も個人も生き抜けない時代になった。

こうした状態に対処するには、そう、学ぶしかない。学ぶには「歴史に学ぶ」「別の業界に学ぶ」「海外事例に学ぶ」などの手法があるが、それらをすべて包摂するのが「本を読んで学ぶ」やり方なのだ。そこで私が普段から行っている経営書を読む際の3つのポイントを伝授しよう。

1つ目は「正解を探すな」だ。自分の疑問や抱えている問題に対して、「本が正解を与えてくれる」と思ってはならない。正解はあなたが自分自身で導き出すべきであり、本はそのためのヒントや発想法を得るために読むべきなのである。

2つ目が「インサイトを得るために読め」。私はボストンコンサルティング時代、「インフォメーションとインサイトは違う」とよくいわれた。前者は、「渋谷でこんなものが流行っている」といった単なる「情報」である。後者は、「その背景にはこんな理由がある」という「洞察」のこと。情報に「だからどうした?」という問いを投げかけて返ってくる答えがインサイトだ。情報はすぐ陳腐化するが、洞察は他の現象を考察する場合にも利用できる。その洞察パターンをいくつ知っているかで、問題解決力は大きく変わる。

最後は「自分の文脈で読め」。私が本に付箋をつけたり、マーカーを引いているのは、いずれも「面白い」「使える」と思った個所ばかり。そのために必要なのが問題意識だ。自分は何を知りたいのか、何に悩んでいるのか。常に問題意識を持ちながら、読むべき本を紐解いている。

そういうと経営学の研究者からは邪道だと思われるかもしれない。でも、いいではないか。私たちは問題解決のために本を読むのだから。最後に、大きめの書店に行って売り場を一巡して買うことをお勧めする。そのほうが自分の問題意識に刺さる本が広範に見つかるはずだ。