金融マーケットは「個」の集合体であり「あなたの考え」は市場を動かす力となる。だが一方であなたは集合体の中の小さな「個」でしかなく、思い通りにマーケットを動かすことはできない。ここをふまえずに市場を語る人がいるが、この二面性を理解しておくことはとても重要だ。マーケットを生き抜くには自分以外の様々な「個」の存在を知ることが役立つ。その意味では実は小説が参考になると思われるが、金融に近い領域の書籍では次の3冊をお勧めする。

本を選ぶ際に重要なのは、成功体験を綴った類のものではなく、普遍的な方法論を説いているかどうかだ。『インテリジェンス 武器なき戦争』には、スパイのような情報のプロも、公開された新聞報道などを正しい視点で捉え直すことで、顕在化していない重要情報に迫ると書いてある。『ヤバい経済学』は、日常生活で得る断片情報のいい加減さを教えてくれる。この2冊から情報の捉え方を学ぶと、思考力が養えるだろう。

心理学的な視点でマーケットを理解することも大切だ。『ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る』はイチオシ。感情に左右されにくいと思われているトレーダーの判断や認識にも実は感情や癖(バイアス)が働いていることがわかり興味深い。

■情報から真実を解き明かす技術

『インテリジェンス 武器なき戦争』
    手嶋龍一、佐藤 優/幻冬舎新書

実は各国のスパイたちが暗躍する都市・東京は、情報戦の最前線。秘密情報の98%は公開情報を整理することで得られるという。誰もがアクセスできる情報を集めて自分で咀嚼して組み替え、真に重要な情報(=インテリジェンス)を導き出すことがスパイの重要な仕事なのだ。情報の読み解き方を知ることは「考える力」を磨くヒントになる。