4年4カ月分の未払い給料が1417万円
②休職してから現在までの給料:1417万円
この会社は、Aさんが休職して以降、給料を1円も支払わず、休職から1年後には解雇した。裁判中、会社は解雇がまずいと思ったのか解雇を撤回してきたが、依然として給料は支払わなかった。
判決は、「Aさんが休職したのは、会社のパワハラが原因なので、Aさんが休職してから現在までの給料は、全額会社が支払わなければならない」とした。給料が出なくなったのは14年8月分からで、直近の給料は18年11月分なので、未払いは4年4カ月分。Aさんの手取りは月27万2500円なので、判決が支払いを命じた給料は1417万円となった。
③残業代・付加金:334万円
この会社はAさんに全く残業代を支払っておらず、裁判でも、「ボーナスが残業代の代わりだった」などという無茶苦茶な主張をしていた。判決は、会社に対し、残業代236万円、付加金(悪質な不払残業に対する罰金のようなもの)98万円の支払いを命じた。
パワハラ裁判中にパワハラの手紙を送る鬼畜の所業
④「パワハラ裁判中のパワハラ」の慰謝料・弁護士費用:22万円
信じがたいことに、パワハラ裁判中、会社はAさんの自宅や親族の家にAさんを誹謗中傷する手紙を送りつけてきた。Aさんは手紙を読んで、過呼吸の発作を起こした。
判決は、この「パワハラ裁判中のパワハラ」を次のように断じて、会社と社長に対し、慰謝料20万円、弁護士費用2万円の支払を命じた。判決文を読めば、いかに酷い手紙だったかがわかるだろう。
手紙は、直接原告に宛てて、『被告Sのマインドコントロール下にあった精神状態で、私ども会社のお客様からの大事な業務をしていたのかと思うと、ぞっとします』などと、被告Sのパワハラを受けつつ業務をしたことを原告の落ち度であるかのように問題をすり替えて原告を非難したり、『貴殿のことを思いやってからの行動であるにも関わらず、貴殿は裁判に訴えるという暴挙にでました』『社会通念上、会社の社員がとる行動か全く理解できません』『復職したいという人間が、会社のことを誹謗中傷するなど、当然許されない愚行』『貴殿は今回の件を……などと理解不能な主張をしていますが、入社2、3年の人間の言動として余りあるものです』『もういい加減にこの問題に自分なりに決着をつけ、今後の貴殿の5年後、10年後、20年後の人生を前進的なものにしていただきたい』などと、全体として、原告が自らのパワハラ被害を訴えて会社を批判し、本件訴訟で係争すること自体が非常識で分をわきまえない行為であるかのように原告を見下して一方的に非難し、貶しめたりするものであって、これらの文書を送付する行為は、原告の名誉感情を侵害する違法な侮辱行為に当たり、不法行為を構成する。