地政学では大陸は1つしかない
まず、地政学では世界の大陸を一般的な見方とは異なる視点で捉えます。一般的に学校の地理の授業では、世界は7つの大陸(ヨーロッパ、アジア、アフリカ、北米、南米、オーストラリア、南極)で構成されると習います。
しかし、地政学はこれとは違い、世界は1つの大陸(ユーラシア大陸)と、それを囲む島々(北米、南米、アフリカ、オーストラリア、南極、イギリス、日本など)で構成されると解釈します。なぜユーラシア大陸のみを「大陸」と表現するかというと、ここがそれだけ単一の陸地として別格の力を持つからです。
ユーラシア大陸は地球上の陸地全体の約4割を占める、地球最大の大陸です。人口に関しては世界全体の7割、そして世界のGDPの6割が集中します。天然資源も豊富で、石油埋蔵量は6割を占め、天然ガスの7割、石炭の5割がこの大陸に埋まっています。
『あの国の本当の思惑を見抜く 地政学』(サンマーク出版)のPART1では、世界を征服できる勢力を持つ国を「覇権国」と呼びましたが、この覇権国が出現し得る唯一の大陸が、ユーラシア大陸です。なぜなら、この大陸のみが圧倒的な人口、資源、工業力を有し、残りの島々を征服できるほどの勢力を持つからです。スパイクマンはこう言いました。「ユーラシアを制する者は世界の運命を制する」。
大陸諸国は長年、覇権争いを繰り広げてきた
ユーラシア大陸には、潜在的に征服を実現できる大国がたくさんあります。フランス、ドイツ、ロシア、中国など、ユーラシア大陸には大国が集中しています。これらの国々は陸で?がっているので、構造的に安全保障のジレンマを抱えやすい環境にあり、常に「他の大陸国家を征服しなければならない」という潜在的な意識の下に動きます。
そうした攻防が行われるうちに、やがて潜在覇権国と呼ばれるような、群を抜いて強い国が現れます。そうすると、半ば必然的に勢力均衡の原理が働き、他の大陸諸国は対抗連合を組んで潜在覇権国を封じ込めようとします。
しかし、大陸諸国が対抗連合を組んでもなお対抗し切れない、非常に強い潜在覇権国が登場することもあります。例えば、ナポレオンは一時ヨーロッパのほぼ全土を征服し、ヨーロッパ大陸に、他に対抗できる国がなくなったことがありました。第二次世界大戦時のドイツも同じです。第二次世界大戦直後のソ連も非常に強力で、フランスとドイツ、その他の西欧諸国が束になっても対抗し得ませんでした。