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官僚型ではなくダイナミックな構想を示せる人

トランプさんが大統領に復帰した場合、対米関係における日本の顔として望ましいのは、「ビジネスがわかり、態度がでかく、カネにきれいな人」だと僕は思います。

安倍さんとトランプさんの関係が良好だったのは事実です。16年の大統領選挙後には安倍さんはいち早く渡米し、どこの国よりも早く次期大統領となるトランプさんを祝福しました。複数回にわたりプライベートでゴルフを楽しみ、人間としての波長も合った。

2018年9月、米ニューヨークでトランプ大統領の歓待を受ける安倍晋三首相(いずれも当時)
2018年9月、米ニューヨークでトランプ大統領の歓待を受ける安倍晋三首相(いずれも当時)。もしトランプ氏が政権に復帰したら、安倍氏を欠く日本はどう対処すればいいのだろうか。写真は内閣広報室提供。

もっとも、だからといって日本側の言い分を何でも聞いてくれたわけではありません。交渉事では「アメリカ・ファースト」の原則論から極端な保護主義に走りがちなトランプさんに対して、安倍さんは柔らかく、一見すると日本ばかりが得をしているようだが、実際にはアメリカにもこんなに恩恵があるじゃないかと説くことで、アメリカ側の譲歩を引き出していったといいます。

トランプさんは政治家ですが、基本的にはビジネスの世界で勝ち抜いてきた人物です。そのため、建て前やイデオロギーよりも、自国や自分自身にとっての「実質的な利益」を勝ち取るべく取引に臨む、ディール思考の持ち主なのです。

したがって日本のリーダーも、「日本側の交渉者として日米お互いの利益を見据え、ビジネス上の取引ができる押し出しの強い人」がふさわしいと思います。「態度がでかい」というのは、そういうことです。

逆に言うと、細かなプロセスや建て前にこだわりがちな官僚タイプは、トランプさんと胸襟を開いて話し合うことが難しいと思います。別に僕は官僚はダメだと言っているのではありません。トランプさんのこれまでの言動から、重箱の隅をつつくようなタイプより、大局を語れるダイナミックさを彼は好むだろうということです。

政府関係者に聞くところによると、大統領時代のトランプさんへの説明は「話は3分、資料は2枚程度まで」が鉄則だったそうです。同様のルールを持つ会社は日本にもたくさんありますが、社交辞令や冗長な説明を嫌うのは性格というよりビジネスマンとしての特徴かもしれません。