交流の浅い人と組むほうが創造性が高くなる

グラノベッター以降の多くの研究によって、弱い紐帯の強みが裏づけられている。2007年のリー・フレミング、サンチャゴ・ミンゴ、デビッド・チェンによる研究は、1人以上の人と共同で特許を取得した3万5000人の発明家のデータを収集して、強い紐帯(過去に共同で特許を取得したことのある集団)と弱い紐帯(初めて共同で特許を取得した集団)に分類し、弱い紐帯が生み出す特許の方が数が多く、創造性も高い(まったく、またはほとんど類がない)ことを示した。

シーナ・アイエンガー『THINK BIGGER 「最高の発想」を生む方法』(NewsPicksパブリッシング)
シーナ・アイエンガー『THINK BIGGER 「最高の発想」を生む方法』(NewsPicksパブリッシング)

弱い紐帯の例をもう1つ紹介しよう。ジュゼッペ・ベッペ・ソダ、ピア・ビットリオ・マヌッチ、ロナルド・S・バートは、イギリスの長寿SFテレビドラマ「ドクター・フーの各エピソードの制作者と監督、脚本家のリストを分析した。制作者はエピソードの監督を連続して担当することが多かったが、監督と脚本家はそうではなかった。

ソダらは独自開発した指標を使って、各エピソードの創造性を評価し、それらを担当した制作者と監督、脚本家が過去に組んだことがあるかどうかを調べた。結果はどうだったか? 過去に組んだことのない、弱い紐帯のチームほど、創造性の高いエピソードを生み出していた。

これらを踏まえると、弱い紐帯が領域外の戦術を生み出しやすいことがわかる。

「打ち解けられるか」を悩む必要はない

またこのことも、多様性を成果につなげるためのヒントになる。強い紐帯は、主に家族や友人、同僚などだから、一般に弱い紐帯よりも多様性に乏しい。アイデアワーキングは、多様性の高いつながりを求める理由となり、手段となる。人は生来、異質な相手とのコミュニケーションが苦手だが、アイデアワーキングをやればすぐに打ち解けられる。

見ず知らずの専門家に連絡を取る場合でも、課題の質問をすれば緊張がほぐれる。あなたは専門家と友だちになろうとしているのではないし、彼らを自分のネットワークに加えようとしているのでもない。彼らを課題の領域の専門家として仰ぎ、興味深い知的な質問をしているのだ。

ほとんどの人は気をよくして、喜んで話をしてくれるだろう。多様な専門家と話せば話すほど、領域外の戦術がたくさん見つかり、創造性の高い解決策を生み出せるようになる。

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