ところで、「本当に」家庭生活の中で子どもに対して感謝の念が生まれたなら、そのときは、ごほうびはありです。たとえば、母親が疲れて仕事から帰ってきたとき、すっかり洗濯物が片づいていて、お風呂も沸いていてごはんも炊けていたら、「うれしい! ありがとう。じゃあ、あんまりうれしいからごほうびに……今度の日曜日、パフェおごっちゃおうかな!」などと言うのは、ぜひたくさん行ってください。

黄色い花を手渡す母
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「ほしい理由のプレゼン」で脳を育てる

テストの点数を交換条件としてほしい物を買うのはNGですが、子どもが何かをほしがったときは、実は、脳を育てるチャンスです。そのまま買ってあげるのではなく、なぜほしいのか「プレゼン(プレゼンテーション)」をしてもらいましょう。

ほしい「物」がある場合には、「どのような機能があるのか」「なぜそれが必要なのか」「予算はいくらなのか」などについて説明してもらいます。ほしい物が、ゲームや洋服などの「物品」ではなく、「釣りに行きたい」「ディズニーランドに行きたい」などの「(お金のかかる)やりたいこと」の場合にもプレゼンのチャンスです。その場合には、「目的」「交通費などの経費」「必要な持ち物」「タイムスケジュール」などを説明してもらいましょう。

「高次脳機能」である前頭葉は、計画を立てるなどの論理的な思考と判断を働かせる場所です。プレゼンをさせることは、前頭葉の働きを活発化させます。

プレゼンが習慣になれば、子どもは「ほしい」と思ったときに、「本当に必要なのか」を自問するようになります。場合によっては、「みんなが持っているからほしいと思ったけれど、よく考えたら使わないな」などと結論を出すこともあるでしょう。それは脳が育っている何よりの証拠です。

プレゼン能力は、どんな仕事、職業にも求められるスキルです。プレゼンが上手になっていくことは、子どもが成長していることの証しでもあります。生まれたときに「心配100/信頼0」だった子どもを、18歳で「心配0/信頼100」で手放すために、その能力をどんどん伸ばしてあげましょう。

家事のお手伝いに「おだちん」を払ってはいけない

おだちんちょうだい! シュンイチ(小3)
今日の晩ごはんはグラタン。牛乳を切らしていたので、「シュンイチ! おだちんあげるから、買い物に行ってきて」と1000円札を渡す母親。シュンイチはお釣りをすべてくれるというので大喜びです。母親はお使いを頼むときはいつも、お礼にお金を渡しています。
そんなある日――。晩ごはんの準備をしている母親に、「何か買ってくるものない?」とシュンイチが話しかけてきました。「今日は大丈夫」と答える母親に、「何か買ってくるからさ、おだちんちょうだいよ~。漫画ほしいんだよ~!」とシュンイチは暴れ始めました。

私たちは、子どもが家の仕事をした際、「おだちん」を渡すべきではないと思っています。そもそも、家の仕事を子どもがすることを、「お手伝い」だと考えるべきではないとも思っています。これは、親御さんが毎日ごはんを作ることに報酬が生じないのと同じことです。