箱根駅伝は誰のものか?

今回の“騒動”について、川内優輝はヤフーコメントにエキスパートという立場で以下のコメントを書き込んでいる。

明確な議論の場が設けられずに学生連合チームが廃止されたのは今回が初めてではありません。10年前の90回記念大会でも当時の学連選抜チームが今回と同じような構図で廃止されました。10年前も東京大学を中心に学連選抜存続を望む学生達が関東学連の会議で議論を続けた結果、多数決で91回大会以降の復活が決まりました。しかし、順位ありの「学連選抜」チームはオープン参加の「学生連合」チームに名称や記録の扱いが変更されて、1校1人などチーム編成の方法も変更されました。ですので、この「学生連合チーム存廃問題」は直近数年に出てきた問題ではなく、10年以上前から続いている問題なのです。

これは箱根駅伝が誰のための大会なのか、よくわかるエピソードのように感じる。連合チームの存続を望む大学があるなかで、正式な手続きを行わずに“密室”で決定してしまう関東学連の体質は変わらないようだ。

これまでも「関東インカレポイント」(関東インカレの成績を予選会のタイムに換算する)を導入するなど、多数決では絶対に通らないであろうルールが承認されてきた。

給水ポイント
写真=iStock.com/kanzilyou
※写真はイメージです

正月に開催される箱根駅伝は絶大な人気を誇っている。主催する関東学連は1919年(大正8年)に創立。日本陸上界では最古の連盟組織だ。国民的な大イベントになった箱根駅伝は“学生主体”で大会を運営されてきたはずだったが、いつしか“特定の権力者”が強行で新ルールを決めるような組織になっているようだ。

第101回大会での連合チームの編成可否は現時点で未定だが、関東学連の加盟校数は244校(2023年度)。一方で箱根駅伝の通常出場枠は「20校」だ。箱根駅伝に出られない大学の方が圧倒的に多い。純粋な多数決になれば、連合チームが存続される可能性は高い。廃止にするなら、合理性のある理由が必要になるだろう。誰もが納得するかたちでルールを決めていくしかない。

また第100回大会は全国の大学に門戸が開かれたが、この発表も予選会が開催される1年ほど前だった。遅くとも4~5年前にアナウンスしなければ、自力で夢をかなえることはできない。

予選会だからといって、フリーパスで出られるわけではないからだ。予選会のエントリーは各校10人以上14人以下で、「エントリー者全員が10000m34分以内のトラックでの公認記録を有していること」という条件がある。

単に人数をそろえればOKではない。ある程度の走力を求められるため、長距離部員が少ない大学は予選会に出場するのもなかなか難しい。フィクションの世界のように、わずか1年でチームを整えて、予選会を突破するのは不可能だ。

箱根駅伝の人気が高くなったゆえに、大人たちの暴走が目立っている。箱根駅伝は誰のための大会なのか。第100回大会を“お祭り騒ぎ”で終えるのではなく、しっかりと考えるべきだろう。

【関連記事】
「乳首が落ちても走る」優勝賞金"世界選手権0円、27時間テレビ1000万円"酷暑で100km走らせる鬼のそろばん勘定
「かつては東大卒よりも価値があった」47都道府県に必ずある"超名門"公立高校の全一覧【2022上半期BEST5】
「今から行くから待ってろコラ!」電話のあと本当に来社したモンスタークレーマーを撃退した意外なひと言
「ねえ、ラブホいかへん?」夜の街で家出少女に声をかけられた牧師はどう答えたか
中2で「初めてのセックスはどんな状況か」を考えさせる…日本と全然違うカナダの性教育