【加工】FVサバンナ八木氏勉強法_後編

お笑いコンビ・サバンナとして30年以上のキャリアを持ちながら、2024年に50歳で「1級ファイナンシャル・プランニング(FP)技能士」の資格を取得し、現在も複数の資格試験に挑戦し続ける八木真澄さん。新著『世界一ゆるい勉強法』には、従来の勉強法とは一線を画す独自のアプローチが詰まっている。その八木さんに、勉強を継続する目的や資格取得後のキャリアの変化について聞いた。

勉強は筋トレ。資格は「自分を高めるための手段」

2022年の5月からFPの勉強を始めて、もうすぐ4年になるんですけど、僕が勉強を続ける中で身に付いたのは、「自分の頭の中を図式化して思考整理できるようになった」ことですね。だから最近は仕事の打ち合わせしても、異常に早いんですよ。

勉強を始める前は、例えばスタッフさんから「最近なんか面白いエピソードありましたか?」って聞かれたときに、ただ思いつくままダラダラとしゃべってて、結果的に何が言いたいのかわからへん、みたいな感じやったんです。要は、話をどう構成したらいいかわからなかったんですよね。

それが今では、「これ何分番組ですか?」「その中で、僕の出番はどこですか?」「どんな役割が欲しいですか?」って質問しながら図を描いて、番組の構成要素をブロック化できるようになったんです。この図をスタッフさんと共有しながら話すようになったんで、以前の5分の1ぐらいの時間で打ち合わせが終わるようになりました。理解と読み込みとアウトプット……勉強することで、これが格段に速くなったって感じてます。書くことが“勉強の癖”になったので、今ではノートは絶対必須アイテムで、持ち歩いています。

勉強が役に立った経験は過去にもあります。20年ほど前、勝間和代さんの『効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法』という本を読んだら、「とりあえず文章を書きまくれ」「慣れてきたら、本一冊ぐらい一気に書けるようになる」って書かれていたんです。それで、30歳から10年以上、毎日エッセイを書き続けたんですよ。僕、20代の頃はトークで笑いを取ったことがなかったんですけど、37歳のときにキレイに笑い取れたんです。そのときに「あ、こういうことやってんな!」って気づいたんです。要は国語能力が足りなかったから、何か面白いことが起こったときに文章にできなかったんですね。

僕がなんで勉強してるかっていうと、資格を取ること自体が目的じゃなくて、「勉強することによって自分自身を高めてる」感じなんですよ。資格はあくまで、自分を高めるための手段。筋トレでいうと「ベンチプレスで〇キロ上げた」みたいな、自分の実力を試すための指標なんです。この脳の筋トレをしとかないと、いろんなことに対応できなくなる、アホになるんですよ。もうそんなに伸びませんし、年も取ります。これをやっとかないと、60歳を超えたら的外れなこととかを言いだすと思うんですよ。

面白いもので、勉強が習慣になって、毎日、頭を疲労させる癖がついてくると、今度は「疲労してないと気持ち悪い」って感じるようになってくるんです。このあたりも筋トレと似てますよね。

【加工】八木さん勉強法_後編

チャレンジしすぎたら不幸になる可能性も高いが……

よく「これまでの人生でもっと〇〇しておけばよかった」みたいな話を聞くんですけど、僕は後悔したことないですね。1ミリもないです。17歳のときから日記を書いてその日1日を振り返りながら、「絶対に後悔せえへんように」っていうことでやってきたんで。だから、例えば25歳のときにギャルと付き合いたくてギャル男になったりとかもしましたけど(笑)、それを後悔したことは一度もありません。だから子どもたちにも、「人生、そのときしかできへんこといっぱいあるから、やりたいと思ったことは全力でやれ」って、いつも言ってます。勉強なんか、何歳からでもできるじゃないですか。

最近、うちの息子が中学受験に合格して、春から中学生になるんですけど、彼が通ってた個別塾の塾長が、僕と同じような考え方の人やったんです。どういうことかというと、「その子が日々の勉強を頑張って、普通に合格できる学校が、その子にとって適正な学校だ」っていう方針やったんです。だから、入試直前の12月ぐらいに書道とかさせるんですよ(笑)。普通の塾なら試験に向けて詰め込めるだけ詰め込みたいときに、書道して帰ってくる。入試の2週間前に理科の実験とかしてるんです。

なんでかというと、「ここで無理やり詰め込んで、もし受験に失敗したら、その子は一生勉強が嫌いになってしまう」って考え方なんですよ。だから入試とか関係なしに、いつもどおり勉強をやっていく流れで受からないとダメって言うんです。まさに僕と同じ考えなんです。だから息子は入試に受かった後も、その塾に通い続けてたんですよ。勉強ってそういうもんやと思うんです。まぁ、もし入試に全部落ちてたら、僕も「なんで書道と実験やねん!」ってなるんでしょうけどね(笑)。

僕自身は「自分自身を高めるために勉強する」という考えなんですけど、子どもたちにもそうしてほしいとは思ってないんです。それはなんでかというと、「チャレンジしすぎたら不幸になる可能性も高い」と思ってるからなんですよ。どんどん上を目指して進んでいったら、上には上がいるから、より高いレベルで戦わないといけなくなる。芸能界なんかその最たるもので、とんでもないバケモノばっかりが集まってるわけです。僕自身、この世界に入って思うことは、「日々勉強してない人間は生き残れない」っていうことです。

テレビを見てる人たちは「芸能人って、楽しくお金稼いでる人」って思ってるかもしれません。表面的にはそう見えるけど、実はみんな激しく戦ってるんです。だから、テレビ番組で司会をしてるような人で太ってる人っていないでしょ。たぶん遊んでないと思うんですよ。オフの時間もずっと次の仕事のことを考えて、そういう努力は人に見せないけど、絶えず戦ってる……ゴールのない受験勉強みたいなもんですよ。それがいかにしんどいことかは身に染みてわかってるから、子どもたちに「勉強せぇ」とは言わないんです。

資格取得で見えてきた「新しい世界」

2024年にFP1級を取得してからは、講演会の仕事が増えましたね。 2025年は34本で、2026年は2月末時点でもう十数本ぐらいかな。日本各地のJA さんとか保険会社の協会さんとか、いろんなとこ行くんですけど、やっぱり最初のうちは「技」を見せたくなるんですよね。「俺こんだけ知ってんねん、知らんかったやろ」って、自分の知識を披露してたんです。

でも、ある時、子どもたちもいるような会場に行ったときに「そっか! そういうことじゃないんや」って気づいたんです。で、最近取り入れたのがクイズ。例えば「信号機の値段はいくらでしょう?」とか質問するんですよ。 ほんなら子どもが「1万円!」とか言って、会場ドーン受けるんですよ。次に「じゃあ消防車はなんぼでしょう? さっきより高いよ」って言ったら「8万円!」とかね(笑)。

その反応見て、聞いてる人たちが興味あることを話すのが大事なんだと気づいたんです。消費税の説明をするときに「実は子どもたちもみんな税金を払ってます。 何かわかる人?」とかね。そういうふうに楽しみながらやると、みんなに喜んでもらえるんやって気づくのに1年かかりました。これがわかってからは、講演の仕事がいっそう楽しくなりましたね。

新しい仕事といえば、2026年1月から「サバンナ八木の『お金のしゃべり場』」っていうオンラインサロンを始めたんです。参加メンバーの中には、中小企業診断士や司法書士、宅建とかの資格取得を目指してる人たちもいるんですけど、「いままで勉強がつらかったのに、今はめっちゃ楽しい」って言ってくれるんです。やっぱり勉強って、一人でやってると孤独なんですよね。それがこのサロンに来ると「今日は〇時間勉強しました」「すごいですね!」みたいなやり取りがあって、ひとつのチームみたいになってるんです。勉強を継続していくためには、仲間づくりも大切だと思います。

【加工】『世界一ゆるい勉強法』書影
『世界一ゆるい勉強法』
サバンナ 八サバンナ 八木真澄著/KADOKAWA/本体価格1,600円+税
FP資格取得に向けて、八木さんが編み出した500項目以上の勉強法から、96項目を厳選。この24番目に登場するのが「仲間をつくる」だ。その他、八木流テクニックや試験に対する心構えなど、誰にでもできる再現性のある方法満載のこの一冊、ぜひ手に取ってほしい。

最近、「今後、挑戦したい目標は?」とか「やってみたいことはありますか?」ってよく聞かれるんです。簿記やITパスポートなど、資格試験に向けての勉強は継続していますが、目標ややってみたいこと自体は特にないんですよね。僕的には「今日一日、心地よくいけたかどうか」、これがすべてなんです。今日も朝トレーニングに行って、勉強もやってきたんで、この取材が終わったら、もう“今日のやるべきこと”は終了です。今日のベストを尽くす……これが何より楽しいんですよ。

(取材協力=サバンナ 八木真澄、構成=梅澤 聡、撮影=kuma*)