40代におすすめの転職サイトは?
ビジネスパーソンとして油が乗り切る40代。転職してさらに年収と役職を上げることも夢ではない。だが、「40代の転職事情は二極化しています」と語るのは、起業家・著述家のmoto(戸塚俊介)さん。地方ホームセンターに新卒で入社して年収240万円からキャリアを始め、リクルート、ベンチャー企業など8社への転職で年収1億円(副業含む)の会社員に上りつめ、現在は自身が創業した転職広告会社の社長を務める「日本一の転職のプロ」だ。
「40代は、スカウトが来てたくさん転職が決まる人と、まったく転職できない人に明確に分かれます。そもそも、40代はポジションが限られています。空いたときに補充するという感じなので、市場に求人が少ない。その上、ある程度の人材要件が求められます。マネジメント経験があるとか、役員の経験があるとか。プロフェッショナルな経験がある人や、きちんと実積を上げている人じゃないと、なかなか難しいのが現実です」
市場価値が低い人材と思われると、転職エージェントから最初の面談さえ拒否されることも珍しくない。自分の実積に自信があるなら、どんな転職サイトがよいのか。
「JACリクルートメント、リクルートダイレクトスカウトなどのハイクラス人材に強いエージェントがいいでしょう。あとは、業界特化型の転職サイトもあります」
HIRED株式会社 代表取締役
1987年長野県佐久市生まれ。新卒で地方ホームセンター(綿半ホームエイド)へ入社後、マイナビ、リクルートなど8社へ転職し、営業部長や事業責任者を務める。2018年に副業で立ち上げた転職情報メディア『転職アンテナ(https://tenshoku-antenna.com/)』が評判に(2021年に会社売却)。現在は2019年に創業した転職広告会社HIREDの代表取締役。自身の転職経験を基にキャリア戦略を綴った書籍『転職と副業のかけ算』は発行部数10万部を超え、転職希望者のバイブルに。https://hired.co.jp/
40代でヘッドハンティングされる人、されない人
経営幹部の人材を求めている会社から、ヘッドハンティングされる場合もある。
「ビズリーチなどのヘッドハンティング型のサイトに登録しておくと、転職エージェントだけでなく、ヘッドハンターからも連絡が来ます。本当に優秀な人材は、登録していなくても声をかけられます。そういう人はメディアやセミナーに名前が出てスポットが当たるので、向こうから探して来るんです。40代になると他の業界に行くことも難しいので、業界内でのし上がっていくしかない」
今いる業界で、ひとかどの人物になる。そのレベルまで到達しなくても、自分がプロジェクトリーダーとなり、一定の成果を出せば同業他社から評価される。
「例えば30億円、40億円の事業をつくった人は、他社から見ても『あの人すごいね』と思われるんです。大手企業なら一人で多くの人をマネジメントしてプロジェクトを動かし、数十億円をつくれます。それは他社から見ても欲しい人材ですよね」
黙っていてもヘッドハンティングされるような、転職市場で価値のある人材になるには、2つの条件があると、motoさんは言う。
「1つは、経営目線をより強く持ち、会社の売り上げに対して、自分がどう貢献できるのかをちゃんと語れるようにすること。2つ目は、人や組織を使ってプロジェクトを動かすことができること。この2つができれば、どの会社でも活躍できるでしょう」
一番、市場価値が高い人が持っている能力
転職してキャリアアップするには「リスキリング(学び直し)」が必要だと昨今いわれているが、スキルがあるだけでは評価されない。
「一番、市場価値が高いのは、課題を発見し、自分で解決できる人です。スキルを持っているだけではダメで、自分のスキルや資格を生かして、どんな課題を解決できるのかが問われているのです。『私はむしろここの方が課題だと思います。私ならその課題を解決するために、こんなスキルを持っています』と実際に実行できる人はすごく少ない」
一言でいうと、「儲け」をつくれる人だ。プロジェクトや新規事業を任されて懸命に成果を出すと、おのずと転職の話も舞い込んでくる。
「経営視点を持っている人の多くは『どうしたら数字が上がるのか、売り上げをつくれるのか』をずっと考えているし、仕事のオンオフがないのだけれど、それが楽しいんですよね。自分には課題やできることが見えているわけですから。しかも、会社のカネや組織を使うことができる。仕事が回ってくると、もっと楽しくなって熱中する。そういうときにこそ、いい転職の話が来たりするんです」
自分自身を商品と思って転職を重ねてきたmotoさんは、一番絶好調なときにこそ転職すべき、とアドバイスを送る。
「株式と同じで、一番高く売れるときに自分を売るのがいい。下がり始めてからでは売れません」
40代で年収を上げる、もう一つの道
今の仕事で成果を出すことに懸命になり、経営視点を磨いていくことが、結局はキャリアアップにつながる。motoさんは今でこそ経営者になったが、当初は「普通に部長クラスで年収1000万円くらいもらって暮らせたらいいな」と思っていたという。
「でも、経営目線があったから、経営層により近づく転職ができたんでしょうね。『こういうふうに売り上げをつくった方がいい。僕はこういうことができるから、やらせてください』とどんどん提案して実行していたので、それが年収を上げる要因になった気がします」
経営視点があれば、ゼロから事業を立ち上げる能力も身に付く。実際にmotoさんは自身の転職体験を綴った情報サイト『転職アンテナ』を副業で一人で立ち上げ、必死に数字を上げ、副業を含めた年収が1億円に到達した。その後、会社売却し、個人で7億円の売却益も得た。
40代の転職市場は確かにシビアだ。だが、経営視点を磨く努力を重ねれば、たとえ転職できなかったとしても、副業や起業という道も見えてくるはずだ。
(取材協力=戸塚俊介 執筆=真野裕之)