※本稿は、角谷リョウ『一日の休息を最高の成果に変える睡眠戦略 世界のビジネスエリートが取り入れる「7つの眠り方」』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
寝酒は眠りにとってリスクが大きい
快眠のために必要なのは、自分自身の体の状態を睡眠のために整えることです。
「寝酒」や「ナイトキャップ」といった言葉があるように、お酒は昔から、眠りに入りやすくするためのツールとして捉えられてきました。
ただ、飲酒は眠りを妨げる要因にもなります。
人は深い眠りにつくと心拍数が大幅に下がりますが、アルコールは心拍数を上げるため深い眠りを妨げます。
また口やのどの筋肉が緩み、舌の根元がのどに落ち込むことでいびきをかきやすくなり、スムーズな呼吸ができません。尿意が近くなり、夜中にトイレに起きてしまうことも問題です。
このように、眠りにとってお酒は悪影響のほうが大きいといえます。
お酒を飲むなということではなく、大切なのは「飲む時間帯」と「飲む量」です。
就寝時にお酒の影響が体に残りすぎないよう、お酒は早めの時間に飲むようにしましょう。お酒を伴う会食の場合、2次会、3次会まではしごして深酒をするのではなく、早めの1次会でしっかり盛り上がって、サッと切り上げるのがおすすめです。
アルコールの影響は個人差が大きく、「飲酒は就寝何時間前まで」と一律に言うのは難しいものです。中には、適量の寝酒なら眠りに悪影響が出ない人もいるでしょう。
ウェアラブルデバイスでご自身の眠りの質を確かめ、眠りに悪影響を与えない飲み方の範囲を確かめてみましょう。
就寝1~2時間前の軽食は快眠に効く
食事のタイミングも、睡眠に大きく影響します。
食べたものを消化しきれず、体内で消化が続いていると心拍数が下がりにくくなり、深い眠りに入れません。
また胃や腸がごろごろと動くことも眠りを妨げます。
消化にかかる時間は食べるものによっても違いますが、炭水化物など消化のいい物で1~2時間程度、肉や脂肪は4~5時間程度と言われています。がっつりした肉料理や揚げ物などを楽しむときは、就寝の4~5時間前に食事を済ませるように注意してください。
一方で、意外にも快適な眠りの助けになるのが、就寝1~2時間前の軽食です。夕食を早めにとると、いざ就寝時におなかがグーグー鳴って眠れない、といったことがありますよね。
そんなときおすすめなのが、温かい麵類です。
眠りに入るには、いったん上げた体温を、すっと下げることが重要です。温かい麵類はスープを飲むことで体を温める効果があるほか、適量の糖質が眠気を誘ってくれます。
コーヒーや紅茶よりハーブティー
ただし、食べ過ぎは禁物。
消化しきれないと眠りの妨げになるほか、糖質を取りすぎると睡眠中に低血糖状態になり、心拍数が下がりにくくなってしまうことがあります。お酒と同様、適量は人によって違いますが、私の場合はカップ麵を半分程度食べるのがちょうどいいようです。
体温を上げ、糖質をとるという意味では「ハーブティーと少量のスイーツ」といった組み合わせもおすすめです。
コーヒーや紅茶はカフェインの悪影響があるので避けてください。私はカモミールティーとともに、小ぶりのケーキを妻と半分ずつ食べることがよくあります。
みなさんもぜひ、このあとご紹介するように、ウェアラブルデバイスを使って睡眠の質を確かめながら、ご自身にとってほどよい軽食の分量や組み合わせを探ってみてください。
ただしこれは、快適な眠りのための方策です。体重の増加には、各自で十分ご注意ください。
今より30分早起きする短眠戦略
いよいよ、実際に睡眠時間5時間を目指す実践に移りましょう。
ただし、それまで長時間寝ていた人がいきなり短時間睡眠に切り替えるのは危険です。1つずつステップを踏んでいきましょう。
睡眠時間を縮めていくときのルールは、次の3つです。
②起床時間を早めて調節する
③ウェアラブルデバイスで睡眠の質を確かめながら
まずは睡眠時間を、今より30分縮めます。
短縮は、「30分遅く寝る」のではなく、「30分早起きする」ことで進めてください。
就寝前は体も脳も疲労し、回復が必要な状態にあります。短眠は爆発的に仕事をするための戦略ですから、疲労した状態で活動時間を延ばしても効果は限られてしまいます。心身が回復した朝の時間を延ばしてこそ短眠の効果が得られるのです。
多くの人は、睡眠を30分縮めると日中に眠気やだるさを感じます。これは、体が新しい睡眠時間になれるのに数日かかるためです。
睡眠が正しく取れているかどうかを確認するポイントは、目覚め直後の状態です。自分自身の目覚めをしっかりと観察し、強い眠気やだるさがあるといった悪影響が出ていないことが確認できたら、さらに30分短縮しましょう。
1時間以上の深い眠りがあるかどうか
ウェアラブルデバイスで、睡眠のスコアを確認することも忘れずに。60点未満なら、体が新しい睡眠時間になじめていない証拠です。
また、睡眠の詳細を見て深い眠りが最低でも30分以上、できれば1時間以上計測されていれば、短くても質のいい睡眠ができています。
これを繰り返して、じっくり急がずに5時間睡眠を目指します。
日中に強い眠気を感じたり、ウェアラブルデバイスで眠りの質が下がっていることが分かったりしたときは、危険ですので睡眠時間を元に戻してください。
あくまでも仕事のための戦略ですから、大切なあなたの健康を犠牲にすることはおすすめできません。
逆に、「今日から5時間だけ寝る」と決めればすっと移行できる人もいます。そういう方はもともとショートスリーパーの傾向があり、今までがちょっと寝過ぎだったのかもしれませんね。
日中の「パワーナップ」でパフォーマンスを維持
短眠を実践する上で絶対に欠かせないのが、日中に取る「ナップ(仮眠)」です。
睡眠時間を減らすと当然、覚醒している時間が延びます。
脳は覚醒し続けると、徐々に機能が低下してしまいます。ナップで覚醒を分断することで回復を促し、高いパフォーマンスを維持できます。
また、長く覚醒し続けていると、睡眠が足りていても眠気が出てしまいますが、それもナップによって解消できます。
基本となるのは、15~25分間の「パワーナップ」。
まとめて時間が取れない場合は、10分間の「ミニナップ」も選択肢です。
お昼休みなどを利用して、これらを最低でも1日1回取ります。2~3回取ってもかまいません。
といっても、最初のうちはオフィスで眠るのは難しいものです。本当に眠るのがベストですが、耳栓とアイマスクで音と光を遮断するだけでも、効果は十分に期待できます。
ここで使う耳栓やアイマスクは、自分に合うものであれば100円ショップなどで売っている商品で十分です。
職場でナップをする場合は、上司や同僚の理解を得ておくことも大切。
まだまだ「居眠りや昼寝は悪いこと」と思っている人も多いので、「眠りは単なる休憩ではなく、脳を回復させるために必要」ということを説明しましょう。
どうしても理解を得られない場合は、空いている会議室や社外のカフェ、営業車の中など、会社の人の目に触れないところでナップを取るのも手です。