※本稿は、道江美貴子『国内最大級の食事管理アプリ「あすけん」公式 結局、これを食べるが勝ち』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
「油は悪者じゃない」正しく選ぶコツは?
「太る」「体によくない」と、悪者にされることの多い油。1g9kcalのエネルギーがある脂質は、1g4kcalの炭水化物やたんぱく質と比べると、確かに高カロリー。
当然、摂りすぎれば肥満や生活習慣病のリスクを高めますが、適度な摂取はむしろ美容と健康に欠かせないため、「痩せたけれど老けた」というダイエットあるあるを防ぐためにも完全なオイルカットはおすすめしません。
脂質はホルモンや細胞膜の材料になり、内臓を守ります。またビタミンA、D、E、Kといった油に溶ける性質を持つ「脂溶性ビタミン」の吸収を助け、体温の維持にも不可欠!
また脂質は少量でも腹持ちがよく、効率のよいエネルギー源です。脂質の摂取目安は、1日の目標摂取エネルギーの20~30%程度。この範囲内で、できるだけ体にいい油を摂るのがポイント。
いい油とは? 基本知識を押さえて
脂質には種類があり、大きく飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の2つに分けられます。飽和脂肪酸は肉類や乳製品、バターなど動物性食品に含まれる油。現代人は摂る機会が多く、肥満や血管の老化、生活習慣病を招きやすくなるため、控えめを心がけて。
一方の不飽和脂肪酸は、魚や植物性の食品に多く含まれる油で、血圧や悪玉コレステロール値を下げる働きがあり、健康維持に欠かせない存在。不飽和脂肪酸には、オメガ3、オメガ6、オメガ9の3つがあり、それぞれに特徴が異なります。
3つの油を「バランス良く」摂る
オメガ3
オメガ3は、マグロや鮭、サバなどの青魚やアマニ油、エゴマ油などに含まれる油で、DHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれます。
認知症の予防をはじめ、生活習慣病や血栓の予防も期待できます。熱に弱く酸化しやすい性質があるため、干物のような酸化した食品や加熱調理には注意が必要。刺身や真空状態が保たれたサバ缶、ツナ缶は、調理なしで酸化していない油が摂れるので便利。
オメガ6
オメガ6は、大豆油やコーン油などのサラダ油に多く、悪玉コレステロールを減らして血流を改善します。オメガ6は摂りすぎると、悪玉だけでなく善玉コレステロールも減ってしまうので、摂りすぎには注意が必要です。
オメガ9
またオメガ9は、オリーブオイルなどに豊富で、善玉コレステロールを減らさずに悪玉だけを減らすため、血中コレステロールを適正に保つ働きが。
じつは、オメガ3とオメガ6は体内で作ることのできない必須脂肪酸。ゆえに食べ物から摂る必要がありますが、現代の食生活では、オメガ6を摂りすぎる傾向があります。炒め油などはオメガ9のオリーブオイルに替えるなどの工夫を。
逆にオメガ3は不足しがちなので、意識して摂ることが大切。オメガ3とオメガ6は、1対4の割合で摂るのが理想的です。
※【あすけんDATA】について:『あすけん』に登録された45億件を超える食事記録データをもとに、食品ごとに登録件数を集計しランキングを作成。ダイエットや健康管理に取り組む『あすけん』ユーザーの皆さまが日常的に食べている食品群を紹介しています。
「上手く油を摂る」救世主はこの食材
野菜の中でも、抜群の栄養価を誇るにんじん。目のビタミンとも呼ばれるビタミンAが豊富で、抗酸化作用や皮膚や粘膜の保護などさまざまな健康効果があります。スティックやサラダなど生のままノンオイルで食べるとヘルシーで体にいいと思いがちですが、じつはコレは間違い。
にんじんに含まれるビタミンAは、油と一緒に摂ることで吸収が促される脂溶性ビタミン。つまり、オリーブオイルやオイル系のドレッシング、炒め物をする際の油分と一緒に食べると吸収率が上がるのです。
調理法に気をつけて
ビタミンには、油に溶ける脂溶性のほか、水に溶けやすい水溶性があります。脂溶性ビタミンはおもに、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなど。水溶性ビタミンには、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンCなどがあります。
気をつけたいのが、水溶性ビタミンが多い野菜の調理法。たとえば水溶性のビタミンCを含むキャベツは、切ったまま水にさらしておくと、断面からビタミンが溶けて出てしまいます。野菜は水につけると水分を吸収してシャキッとして新鮮になるように感じますが、水溶性ビタミンはどんどん逃げてしまうので気をつけて。できるだけさっと洗って、すぐに水から上げることが大切です。
また、水溶性ビタミンはゆでても流出するため、電子レンジで温めたり、蒸したりするほうがビタミンを残すことができます。野菜スープなどにして、水溶性ビタミンが溶け出たスープも一緒に飲むと、余さず栄養が摂り入れられます。
ちなみにコンビニのサラダやカット野菜は、新鮮なものよりもビタミンが減っていますが、食べないよりは食べたほうが◎。状況に応じてよりよい選択ができるように、栄養素の性質を簡単にでも頭に入れておきましょう!
サプリで摂ってるからOK! の考えは捨てよ
あすけんのデータによると「不足しがちな栄養素」の代表的なものは、ビタミンA、食物繊維、カルシウム、鉄。これらをサプリメントで補うのも有効ですが、まずは自然の食材から摂ることが基本。自然の食材には、私たちが意識しているビタミンやミネラルという特定の栄養素のほかにも、さまざまな栄養素や成分が存在しています。私たちはその恩恵を受けながら、体の調子を整えて生きているのです。ですから、特定の栄養素のサプリメントを飲んでいるから大丈夫、と過信しすぎずに、サプリメントは不足分を補うものと考えましょう。
ビタミンAとカルシウムが摂れる、にんじんとヨーグルトのサラダなど、効率的なメニューをレパートリーに入れておくと便利です。
「プロテイン」の恐ろしいリスク
昨今は、健康意識の高まりから「たんぱく質は、プロテインで補っている」という人も多い様子。プロテインは補助食としては便利ですが、過剰摂取は腎臓に負担をかけるため、頼りすぎるのは少々危険です。
肉や魚などのたんぱく質食材には、たんぱく質以外のビタミンやミネラルも含まれているので、基本は日々の食事から摂りましょう。たんぱく質は、炭水化物、脂質とともに三大栄養素の一つで、筋肉や血液、肌、髪、臓器、酵素、ホルモンなどの材料となり、人間の体そのものを作る重要なものです。
さらにエネルギー源としての役割も果たす万能な栄養素。たんぱく質不足が続けば、筋肉が衰えて体力や免疫機能、代謝の低下などのさまざまな悪影響が出てしまうのです。
とくに食が細りがちな高齢者はたんぱく質が不足しやすく、フレイル(病気ではないが年齢とともに、筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい、健康と要介護の間の虚弱な状態)のリスクも高まるため、意識的に摂る必要があります。
若々しい肌もたんぱく質から
厚生労働省によるたんぱく質の1日摂取量の目安は、最低でも女性50g、男性60gが推奨されています。とはいえ1食あたり20gとなると、忙しい朝などは、意識しないとなかなか届きません。ハム、チーズ、卵、納豆、牛乳など、手軽な食材をうまく組み合わせて。
じつは、朝のたんぱく質はメリットだらけ。たんぱく質は食事をした後に発する熱=食事誘発性熱産生(DIT)が高いため、朝から体温が上がって1日の代謝量がアップします。また、たんぱく質は「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの材料になり、メンタルや自律神経のバランスを整えてくれます。さらにセロトニンは、夜には「睡眠ホルモン」のメラトニンにも変換されるので、睡眠の質も高めてくれます。
あわせて朝は、日の光も浴びましょう。体内時計がリセットされる上に、日光を浴びるとセロトニンの分泌が促進されます。注意したいのは、たんぱく質と脂質はたいていセットだということ。肉や乳製品に偏りすぎず、脂質の少ない肉や魚、大豆製品を選ぶのも選択のコツです。