※本稿は、牧田善二『医者が教えるダイエット 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しいやせ方』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
なぜやせない?「隠れ糖質食材」に注意
「大好きなケーキも我慢して頑張っているのに、体重が落ちません」
「ご飯もパンも麺類もほとんど食べていないのに、どうも効果が得られません」
糖質制限を行っている人から、こんな相談を受けることがよくあります。
そこで、数日間の食事内容を細かく教えてもらうと、しっかり糖質を摂っているのがわかります。
彼らは意外な食品に含まれている糖質を見逃していたり、「これは大丈夫だろう」と勝手に思い込んだりしているのです。
糖質依存症は、タバコや薬物の依存症と違い、「原因物質に近づかなければOK」という単純な方法がとれません。
さまざまな食品に多少なりとも糖質が含まれていることから、まったくゼロにするのは不可能。また、偏った食事は健康を害しますから、「いろいろなものを食べながら極力、含まれている糖質を減らしていく」というやり方しかありません。
ここが、糖質制限の難しいところでもあり、また面白いところでもあります。
糖質制限を始めれば、食品表示にも興味が湧いてくるでしょう。
そして、食品表示をしっかり見るようになると、思いもしなかった食品が糖質たっぷりだったことに驚くことでしょう。
そうした「隠れ糖質」についておさらいし、糖質制限をより確固たるものにしていきましょう。
隠れ糖質食材の代表例
ジャガイモ・カボチャ
野菜は総じてビタミン、ミネラル、食物繊維、そして強力な抗酸化作用を持つファイトケミカルが豊富で、糖質制限中に大いに摂って欲しい食材です。
ただし、ジャガイモ、サツマイモなどのイモ類、カボチャは糖質がたっぷりなので除きましょう。焼き芋やスイートポテトなど甘味を楽しむ食べ方でのサツマイモは、慣れてくれば「糖質の塊だな」とすぐわかるでしょう。
でも、塩味のチップスのジャガイモ、サラダに入ったカボチャ、煮ころがしのサトイモなどは見逃しがちです。
どのように料理されているとしても、イモ類やカボチャは糖質過多。
野菜の煮物や肉じゃがなど、家庭的で健康そうな惣菜に、糖質たっぷりの野菜が入っているので注意が必要です。
牛乳・ヨーグルト
糖質制限にチャレンジするときに、案外多いのが「デザート代わりにヨーグルトを食べることにした」という人です。
ジュースや清涼飲料水をやめて牛乳に換えたという人もいます。
まず、ヨーグルトですが、少しでも砂糖で味付けがしてあるものはNGです。「微糖」などという言葉に騙されてはいけません。無糖タイプのプレーンヨーグルトをそのまま食べてください。
ただ、プレーンヨーグルトも牛乳も、もともと「乳糖」という糖質を含んでいます。だから、たくさん摂取すればそれだけ糖質も摂ってしまいます。
基本を守って糖質制限しているのに体重が減らないようなら、しばらくヨーグルトや牛乳はカットしてみましょう。
そば
私の患者さんたちは、食事の度に血糖値を測定しており、なにを食べればどれだけ血糖値が上がるか(つまり太るか)について、専門家と言えるほど把握しています。
その患者さんたちが揃って驚くのが「そば」です。
そばはいかにも健康そうだし、量も少なめ。それなのに、ざるそば一枚食べただけで、血糖値が急上昇するのです。
考えてみれば当たり前で、そば粉は炭水化物です。二八そばなどは小麦粉が足されていますが、同じことです。
しかも、そばは時間をかけずにささっと素早く食べるもの。ほぼ糖質だけの食べ物を短時間でかき込めば、血糖値は急上昇します。そして、それに対応すべくインスリンも大量に出るので太るわけです。
同じ茶碗一杯のご飯を食べるなら、白米よりも玄米をすすめます。
玄米に残っているミネラルや食物繊維などの栄養分が、白米に精製する段階で落とされてしまうからです。
血糖値を抑える食物繊維が、玄米には4倍以上多く含まれています。
同様のことが白いパンと全粒粉パンやライ麦パン、白いパスタと全粒粉パスタなどにも言えます。
精製していないほうが栄養的には優れています。
しかし、玄米も全粒粉の小麦粉も、炭水化物であることには変わりません。
ミネラルや食物繊維が残っているからといって、糖質がなくなるわけではありません。
植物性食品が圧倒的に摂れていない
米や小麦は、糖質を効率的に摂るために人間が後からつくりだしたものです。
私たちの遠い祖先は、ときどき仕留めることができた肉や魚を除き、木の実や山菜、野草など採取した植物類を主に食べて命をつないできました。それだけで、さまざまな栄養素はバランス良く摂れていたのです。
当時と比べて、現代人の食事に圧倒的に少なくなっているのが植物性食品です。ダイエットのみならず、健康のためにも、野菜(糖質の多いイモやカボチャは除く)、豆類、海藻、キノコといった植物性食品をもっと摂りましょう。
植物は動物と違って移動は不可能なので、紫外線を避けたり、昆虫など外敵から逃げることができません。そういう状態にありながら身を守るために、色素や香り、ネバネバした成分など「ファイトケミカル」と呼ばれる強力な抗酸化成分を持っています。
ファイトケミカルは、アントシアニン、イソフラボン、リコピン、クロロフィル、イソチオシアネートなどの免疫活性化物質の総称で、植物性食品を食べることで、私たちはそれらの効果を享受できます。すなわち、免疫力を高め、感染症や生活習慣病から身を守ることができるのです。
ファイトケミカルは、色素の強いものが多く、色によって大まかな成分と作用がわかります。どれか一つに偏るのではなく、いろいろな色を取り入れるつもりで食べるといいでしょう。
野菜はもちろん、豆類、キノコ、海藻も積極的に摂って欲しい植物性食品です。
私の患者さんには、大豆製品の豆腐をご飯代わりに食べている人もいます。納豆は、優れた発酵食品として知られています。
キノコや海藻は、糖質はほぼゼロで、まったく太る心配はありません。その上、腸内環境を整えてくれる食物繊維がたっぷりです。
野菜は1日350gを目指して
糖質制限を行うと便秘になる人がいるのですが、それはご飯などに含まれる食物繊維が減ったためと思われます。植物性食品をたくさん食べて、不足した分の食物繊維を補いましょう。
ちなみに、「MEC(meat/egg/cheese)食」という、肉と卵とチーズを中心に食べるダイエット法が一部で流行しています。糖質が少ないのでたしかに体重は減るかも知れませんが、タンパク質過多となり健康を害します。
それよりも、ファイトケミカル豊富な植物性食品をたくさん食べてください。
厚生労働省は1日に350gの野菜を摂るように推奨しており、私も毎日それ以上しっかり食べています。
しかしながら、たいていの人は350gにはとうてい足りていないはずです。一度、秤で量って、どのくらいの野菜を食べるべきなのか、おおよそのところを把握しておくと良いでしょう。
生のサラダに限りません。おひたしや温野菜にするなど火を通せば量が食べられます。
鍋も植物性食品をたくさん摂れるメニューですから、大いに食卓にのせてください。