データでも裏付けられた“コロナ太り”の実態
企業向け健康支援アプリ「カラダかわるNavi」のユーザーを対象に行った、新型コロナウイルス感染拡大による身体状態や健康行動の変化に関する調査分析が発表された。
●分析項目:体重、歩数、運動の種類。
●分析対象者:「カラダかわるNavi」ユーザーのうち、
体重 n=2020年16857人、2019年11552人
歩数 n=2020年8440人、2019年4871人
運動 n=2020年14383人、2019年12310人
図表1は1月の4週目を基準として、2月以降の体重の増減を調査したもの。2019年は2~3月の8週間で0.6kg減少していたのに対し、2020年はほとんど減少が見られていない。昨年であれば“正月太り”を順調に解消できていたのが、今年は新型コロナウイルスによる生活変化の影響なのか、ダイエットの効果が現れにくくなっているのがわかる。
さらに図表2では、アプリの体重入力が週に2回未満の人は、3月後半からほかの人に比べて顕著に体重が増加し、1カ月弱で約1kg増加している。運動不足になりがちな今の時期は、体重を記録することが体重管理において重要であることがわかる。
自粛期間中は1日の歩数が約1000歩ダウン
外出自粛やテレワークの導入は、健康行動の変化にも影響を与えている。自粛期間では1日の歩数が約1000歩ダウンしていることがわかった。
図表3は2月以前に1日平均5000歩以上歩いていた人を対象に解析したもの。今年は2月1週目をピークに徐々に歩数が減少している。2月上旬と比較すると、自粛要請期間となった2月下旬から3月上旬にかけては約1000歩も減少した。
運動内容を見てみると、自粛要請期間が始まると、ランニングやスポーツ、スタジオプログラムなどの有酸素運動が一気に減っている。その一方で、自宅でもできる筋トレやストレッチなどの軽い運動をする人が増えている(図表4)。
筋トレや軽い運動が増えているとしても、カロリーを消費しやすい有酸素運動が減っているぶん、体重や体脂肪が増えやすい状況になっていることがわかる。
アプリの分析期間は2020年2月2日~3月28日、2019年2月3日~3月30日の各8週間だが、その後4月7日に7都府県、16日には全国に緊急事態宣言が発令されるなど状況はさらに深刻化している。ますます外出の機会は減り、歩数はさらに減っていることが予想されるだろう。
運動不足が長期化すればさまざまな病気のリスクも高まる
運動不足によって引き起こされるのは体重の増加だけではない。外出自粛が長期化して身体活動が顕著に減れば、さまざまな病気のリスクにつながると東京大学大学院准教授の近藤尚己先生は指摘する。
「糖尿病や高血圧、高脂血症、メタボリック症候群のほか、動脈硬化を促すことで将来的に心筋梗塞や脳卒中などの病気になる確率が上がります。身体活動の減少を放置すれば、新型コロナウイルス感染症が終息した後のツケとなって国民全体が不健康になってしまいます。運動は気分をリフレッシュする働きもありますので、運動できずに自宅に引きこもらなければならない状況になると、気分が抑うつ気味になり、うつ病や不安神経症など、精神的な問題を抱えるリスクにもなります」
少しでも家の中で体を動かすことは、このような病気の予防のためには重要だが、ストレッチなど軽い運動だけでは、今まで外で行っていたのと同程度の運動にならないため工夫が必要だという。
「何もしないよりは、1分でも2分でもやっただけプラスになります。続けることが大切なので、無理なく、気分良く行える範囲でまずはやってみることをおすすめします。続けられそうなら、少しずつ目標を上げてみてはどうでしょう。目安としては自粛前に自分がどれくらい体を動かしていたかを考えて、そのレベルを取り戻すのをめざすのはどうでしょうか。例えば、仕事や通勤、その他の外出で普段歩いていた歩数をスマホの歩数計の過去ログでチェックしてみます。私の場合は、普段1日10000歩をクリアすることを緩く守ってきましたが、今は完全に自宅での作業になっているので、少ないときは200歩という衝撃的な日もありました。そこで、雨が降らない限りは近所をジョギングしたり縄跳びをしたりして残りの9800歩を稼ぐのをめざしています。」
例えば、朝起きたらラジオ体操を行う、在宅ワークの合間にスクワットを行う、などといったことはすぐにでも取り組めるだろう。人混みを避けられれば、ウォーキングやランニングは気分転換にもなる。
メンタルヘルスを健康に保つためにも、体を動かす時間を意識的に持ちたいものだ。
自粛中の健康維持のためにできること
運動量は低下しているのに、食べる量はそれほど変わっていない、という人も多いかもしれない。それどころか、普段オフィスでは間食をしないのに、在宅ワークではおやつをつまみながら仕事をしたり、ゆったりとしたルームウェアで過ごしたりすることでウエスト周りの変化に気づきづらいことも“コロナ太り”の背景にはありそうだ。
また、保存の効くインスタント麺や清涼飲料、冷凍食品を買う機会が増えたことで、加工食品に偏り、栄養バランスの乱れが生じている可能性もある。
自粛中の健康維持のためにできることを近藤先生に聞いた。
●日中の用務を事前に決めて、活動的に過ごす
●電話やスマホのトーク機能を使って、人とのコミュニケーションを減らさないようにする
●外出自粛しながらできる運動を行う
「ありきたりですがとても大切なことです。ありきたりのことを自分一人で行うのは難しいと思います。家族や同僚、友人等と連絡を取り合って、みんなで工夫するといいでしょう」