いよいよ、春も終盤。太陽も日に日に高くなり、恵みの雨も10日に1回ほど降る季節に。一方、湿度が高くなってくると、カラダに不調をきたすことも。むくみを改善し、ココロを安定させる養生法を教えます。

カラダの中にも水分を溜め込むこの時期、むくみに注意!

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat)

4月20日~5月4日は穀雨(こくう)です。穀雨とは、穀物を成長させるためにうるおす春雨の時期をさします。春に芽吹いた草花が成長をはじめ、水分を得てグングンと大きくなっていきます。春の土用と重なり、根を張りはじめた植物の成長を妨げることから、昔からむやみに土を掘り起こさないほうがいい時期といわれています。

一方、この時期は湿度が高く心身の不調も多くなりがちに。ココロとカラダのバランスが乱れるため、思い悩みやすくなります。そのため、余分なものを発散させることが大切になります。

穀雨は草木が芽吹きはじめ、イキイキする時期です。

季節のはじまりの初候には、チューリップが咲き乱れるとともに、ゴボウやアジが旬を迎えます。また、朝がとても暖かくなることから、「春眠暁を覚えず」というように、なかなか起きられないという人も多くなります。

季節が進む次項では、ヨモギが旬を迎えます。ヨモギはミネラルや食物繊維が多いうえ、殺菌作用もあることからヨモギ餅などヨモギを混ぜた多くの食材が食卓にのぼりはじめます。また、五風十雨(ごふうじゅうう)ともいわれ、5日に1回風が吹き、10日に1回雨が降るという、過ごしやすい季節になります。

終わりである末候にはボタンの花が咲き、コゴミという山菜やサザエが旬を迎えます。そして、立春から数えて八十八目の夜は八十八夜と呼ばれ、茶摘みの時期であるとともに、夏のはじまりを告げる季節のサインとなります。

春の疲れがたまり、心身ともに不調になる人がいっぱい

穀雨は雨が降り、穀物にはとてもよい季節ですが、人間にとっては湿度が高く、体調をくずしやすい季節でもあります。雨によって体内に湿気を貯めこむと、外界の水分と相まって、カラダが重だるくなり、むくみが生じます。そのため、この時期は水分コントロールがとても重要となります。また、湿度が高く暖かいことで、食中毒も発生しやすく、胃腸を壊しやすくなります。カラダが熱いからといって冷たいものばかり飲んだり食べたりすると、カラダがむくんでだるくなるだけでなく、胃腸の調子も悪くします。

なお、この時期は春の疲れがたまり心身ともに不調を起こすことから、思い悩みやすい時期でもあります。ストレスは胃腸機能の低下にもつながるので、カラダだけでなくココロの状態をコントロールすることが何よりも大切です。

東洋医学では、思い悩むと胃腸を壊しやすいことが知られています。また、水分代謝の不調による胃腸への負担も少なくありません。そのため、体調を整えるだけでなく、ストレスを溜め込まないようココロの管理を徹底しましょう。カラダの不調はココロに多くの負担をかけるため、この時期はとくに、心身ともにケアが必要です。

舌の状態をチェックして、心身コントロールを

「カラダとココロの養生法」

この季節で大切なことは、水分コントロールとストレス解消。時期的に雨が多く、体内に水分が貯まりやすいことから、水分の取りすぎには注意しましょう。なお、体内の水分状態は舌の上のコケ「舌苔(ぜったい)」の状態でわかります。正常時、コケは認められません。しかし、体内に水分が多くたまっているときは苔が多くなります。コケが黄色ければストレスにより胃酸分泌が過剰となり、胃腸に熱を持っている状態です。白いコケの場合は、ストレスが長期間続き全身の筋肉が硬くなり循環が悪くなっているとともに、カラダが冷えている状態を表しています。

毎日、舌のコケの状態を確認し、黄色ければココロの管理を、白ければカラダの管理を行いましょう。

「食養生」

この季節に効果的な食材は「ヨモギ」です。ヨモギは消毒殺菌作用があり、さらには止血にも用いられます。また、お灸にも使用される万能な植物です。利尿作用と止血作用があることから、薬膳では、血尿や生理過多などの出血による貧血改善にも用いられることがあります。

「お勧めのツボ」

この季節にお勧めのツボは、「内関(ないかん)」です。内関は、手首の内側のシワ中央から指3本分ほど離れた部位で、吐き気やムカつきなどの胃腸のコントロールに用いられるとともに、気分を落ち着けたり、安定させたりする作用もあります。なお、内関はつわりや抗がん剤による吐き気、乗り物酔いなど、さまざまな吐き気の軽減に有効なツボです。

穀雨の時期に多い「思い悩み」症状の対処法

「タイプ別・思い悩みの原因」

この時期は心身の疲れがピークになることで、ココロとカラダのバランスをくずしやすくなります。東洋医学では「心身一如」といわれるように、ココロとカラダはつながっているという考えから、ふだん以上に些細なことでも不安になり、何かと思い悩みやすくなります。そのため、心身のバランスを整えてココロを落ち着かせ、安定させることが大切です。

一生懸命頑張りすぎでいる頑張り屋さんタイプの人は、カラダが硬いために、水分代謝をはじめとした循環がうまくいっていません。まずは、筋肉を緩め、カラダを動かして調子を整えながらココロの状態をコントロールしましょう。次に、生活リズムが乱れることによっておこる生活習慣タイプの人は、食習慣が悪いためココロをコントロールするセロトニンなどの神経伝達物質の材料を食事から摂取できず、バランスが取れない可能性が考えられます。バランスをよくするためにも、食事の内容を見直す必要があります。

最後に年齢による加齢タイプの人は、体力の低下が疲れを招き、思い悩みやすい状態になる傾向に。体力をつけることで、ココロとカラダのバランスを整えましょう。

「タイプ別・思い悩みの対処法」

頑張り屋さんタイプは、カラダが硬いために全身の循環が滞っている可能性が大。循環を良くするためにも一定リズムで歩くことが大切です。とくに歩行のリズムはとても重要。平均的な歩行速度は1分間に100ビートといわれていますが、ココロを落ち着けるには90~80ビートの比較的ゆっくりとしたリズムが良いでしょう。ゆっくりとしたリズムで1日15~30分ほど、日光を浴びながら歩いてみましょう。

生活習慣タイプの人は、食事の偏りが原因。ココロの状態をコントロールしているセロトニンという神経伝達物質は、トリプトファンと呼ばれる豆類や鶏肉などに含まれている成分。これらの食材をふんだんに取ることが大切です。また、セロトニンの合成にはトリプトファンの摂取に加えて、合成を促進するビタミンB6(ニンニク、ショウガなど)、炭水化物(果物、イモ類など)の摂取と、太陽の光に当たることが重要です。

トリプトファンを多く含む鶏肉や豆、大豆製品を、ビタミンB6や炭水化物とともに摂取するように意識しよう。

ゆっくりとしたスクワットで筋力をつける

加齢タイプの人は体力をつけることが最重要。ゆっくりとした動きを基調としたスロートレーニングスクワットが効果的です。スロートレーニングスクワットは通常のスクワットとは異なり、屈伸を繰り返すのではなく、曲げた状態を数秒程度キープします。1日30回程行うようにしましょう。屈伸を繰り返すよりも筋肉に負荷がかかり、筋力をつけるには効果的です。

①両足を肩幅に開き、腕・背中を真っ直ぐにした状態で腰を落とし、5秒維持。
②ゆっくり5秒かけてもとの状態に戻す。①②の動作を10回程度繰り返し。

穀雨は、春の疲れがたまるだけでなく、季節的に雨も多いことから体調をくずしやすい時期です。疲れが重なると胃腸に負担をかけるだけでなく、ココロのバランス乱し、些細なことでも気になり、思い悩みやすくなります。そのため、生活の根底を見つめ直し、運動と食事のバランスを整えるようにすることが大切です。

穀雨の次は、いよいよ夏の季節。夏はさらにいろいろなものが活発に動くことから、疲れが増して、ココロのトラブルを起こしがちです。春の疲れは春のうちに解消し、ココロもカラダもリフレッシュした形で、新しい季節を迎えましょう。

「穀雨」の特徴

●心身の症状
カラダ:カラダの重だるさ、むくみ、胃腸トラブル
ココロ:思い悩む

●季節に多い症状
不安感・悩みこむ

●心身の養生法
水分コントロール
舌苔の状態を確認する

●食養生に効く食材
ヨモギ、豆類、鶏肉

●ツボ
内関(ないかん)