不調とまではいかなくても、体や肌の調子が最近イマイチと感じている人は自律神経の乱れが原因かも。ストレスをためてしまう前に、賢くマネジメントしよう。

天気や生活習慣なども、ストレスの一因に

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ストレスの約9割が対人関係によるものと言う順天堂大学医学部教授の小林弘幸先生。ただ、ほかにも日常を取り巻くさまざまなものがストレスになっているそう。

イラスト=二階堂ちはる

「睡眠不足や偏った食生活、気圧や気候の変化に加え、女性はヒールを履いたり、圧迫感のある洋服を着るだけでも身体的なストレスになっています。最近ではSNSやメールなどの影響も大きい。ストレスには自分でコントロールできるものと、防ぎようのないものがあります。だからこそ、コントロールできるものに関しては、ストレスにならないように注意して、防げないストレスは、上手に解消しましょう」

外的ストレスだけでなく、完璧主義者や真面目な性格、不規則な生活を送っている人はストレスがたまりやすいという。

「“キラーストレス”といって、ストレスが体を蝕み、重篤な症状を引き起こすこともわかっています。自覚症状が出てからでは遅いこともあるので、普段からストレスをためない生活を心がけたり、意識的に気持ちの切り替えを行うことが、マネジメントの第一歩です」

自律神経の乱れが、深刻な病気につながることも

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自律神経とは、内臓や血管など、体内の働きを司る神経で、大きく「交感神経」と「副交感神経」に分類される。交感神経は主に日中に働き、体を緊張や興奮状態へと導く。逆に副交感神経は夜や睡眠中に活発となり、日中の活動に備えて、肉体や精神をリラックスさせ、休息させる。この2つが交互にバランスよく働くことで、生命活動と心身の健康が維持されている。

イラスト=二階堂ちはる

「ところが、ストレスを受けて緊張状態が続くと、交感神経が活発に働く状態が続き、バランスがくずれるのです。交感神経には血管を収縮させ、血圧を上げる働きがあります。つまり交感神経が優位な状態が続けば、血流が悪い状態が続くということ。肩こりやむくみやすさ、冷え、慢性的な疲れや倦怠(けんたい)感、寝起きの悪さや頭痛なども引き起こします。女性は月経痛などに現れることもあります。こうした体のサインを『軽微なもの』『体質だから』と思うかもしれませんが、これらの不調が新たな身体的ストレスを引き起こし、さらに症状が重くなるという悪循環に陥ることがあるのです。自律神経の失調は血流障害でもありますから、放っておけば、脳梗塞や心筋梗塞の恐れも出てくるのです」

休息を司る副交感神経には免疫細胞の生成を促す働きもあるため、バランスがくずれると免疫力が下がり、風邪を引きやすくなったり、がんになりやすくなることも。自律神経の乱れは、意外にも多くの病気を引き起こしている。

「また自律神経は臓器の働きにも作用しています。消化が悪くなるので、胃がもたれたり、太りやすくなります。なかでも腸は、動きの約半分が自律神経でコントロールされているため、症状に現れやすい。便秘や下痢などの症状がある人は、自律神経の乱れを疑ったほうがいいですね」

女性の自律神経の働きは、30代から衰え始める

特にストレスを感じていなくても、会議で重要なプレゼンをしたり、アポイントに遅れそうになったりと、ちょっとした気持ちの変化でも自律神経は乱れるそう。さらに自律神経の働きとバランスは加齢とともに悪くなる傾向があると言う、小林先生。

イラスト=二階堂ちはる

「今までと同じ生活なのに、疲れが取れなくなったという実感はありませんか。それは加齢によって自律神経の働きが悪くなったから。女性の場合は30代から40代にかけて働きが悪くなり、特に副交感神経の働きは10年で約15%も低くなることがわかっています。そこにストレスがかかり、自律神経がさらに乱れれば、体に不調が出るのは当然です」

加齢のせいだと思っていたことが実は自律神経に起因しているのであれば、逆に自律神経のバランスが整えば、今まで悩まされていた不調が改善されるということ。

「体が健やかになれば、心に余裕ができて、精神的な負担も軽くなりますし、ストレスそのものを感じにくくなるという好循環が生まれます。ただ、自律神経が乱れていることに気づいていない場合も多いので、まずは自分の自律神経のバランスをチェックしてみましょう。そして、どんなことで自分はストレスを感じるのか、何をするとリフレッシュできるのかを見つけて、ストレスと賢く向き合っていくようにしたいですね」

小林弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
ロンドン大学付属英国王立小児病院外科や、アイルランド国立小児病院外科などに勤務。帰国後、順天堂大学に日本初の便秘外来を設立。自律神経研究の第一人者として知られ、数多くの著書を執筆。

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