自分の部署に配属されてきた若手が個性的で、他の社員から浮いている……そんなとき、現場の担当者はどう対応すべきなのでしょうか。ポイントは2つある、とサカタさんは指摘します。
新卒や第二新卒の若手社員がみなさんの部署に配属されてある程度の時間が経ち、そろそろどんな人物なのかが把握できている時期ではないでしょうか。読者の皆さんの元に、もしも粒が揃っていない、社風から見て明らかに異分子の部下が突然配属されてきたとしたら、どう対処すべきか? というのが今週のテーマです。
会社に「自分と似た人」がそろう理由
以前にもこのコラムで書きましたし、講演などでも話していますが、選考の仕組みがうまく機能している企業ほど、実際に入社する人の粒がきれいに揃うものです。
実際に面接を担当した経験のある方は(イマドキの新卒採用では、人事や採用担当者ではない人に途中の面接をさせることも多い)、事前に受ける“面接官としての心構え”的なレクチャーで、多くの場合には「一緒に働きたいと思う人を通してください」と言われたことがあるはずです。
要は、企業風土やカルチャーなどに共感してくれそう、かつ、周囲とのコミュニケーションが取れる、いわば、ある程度自分たちと似ている人を選べと言われているし、実際に選んでしまう以上、人材の粒が揃ってしまうのは必然なのです。
しかし、企業の採用担当者は、すべての粒を揃えてしまうと組織としてダメになる(本当にそうなのか、その根拠はどこにあるのか、という部分に関しては本稿では触れません)と考え、一定数の異分子を入社させます。ところがその異分子がくせ者。組織にフィットしない場合、本人が辞めてしまうだけでなく、組織全体をかき回した結果、周囲が辞めてしまうという惨事を起こしかねないのです。
まあ、企業が何に期待してその人を採用したのか、例えば「イノベーションを起こしてほしい」とか「今までと違った視点での仕事を作り出してほしい」とか、そういうことに期待していたはずなのに、実際には“皆と仲良くやってほしい”ということの優先順位が高くなって最初の期待を忘れてしまう、もしくはそれはそれとして棚上げしてしまうようなケースで、悲劇が訪れます。
異分子が配属されてきたら、どう接するべき?
さて、皆さんの元に配属された若手社員がその異分子だった場合、どう接するべきか? という冒頭の話題に戻ります。
今までだと、新入社員への接し方は画一的で、それぞれの企業の「ウチの人間はかくあるべし」というものを骨の髄まで染み込ませるような接し方をすれば済んでいました。「常識的には」とか、「普通は」とか、はたまた「ウチではこうだ」という、あるべき姿や考え方、仕事への姿勢や価値観などを徹底的に叩き込み、それに合わせるのが当たり前だという接し方をしてきたはずです。文頭で「今までだと」と書きましたが、今もほとんどの組織はこういうスタイルでしょう。
しかし残念ながら、これでは組織から心が離れてしまう人も少なくありません。若手の立場にしてみれば、今までの常識を打ち破れと言われているにもかかわらず、実際には「常識が」「普通が」「一般的には」と押し付けられるのでは、「話が違う!」と思うのも無理はありません。
こういう話を書くと「まずは、与えられた仕事が一人前にできるようになってから、そういう文句は言うものだ」と怒りだす人もいるのですが、結果的に仕事ができたとしても、組織の中で明らかに異質な人の評価はそれほど高くならないのが現実。「彼は仕事ができるけど、それだけだ」と言われるのがオチです。
企業が高い費用をかけて採用した人材をうまく使いこなし、成長させるのが皆さんのような現場の責任者の腕の見せ所であり、ある種のミッションであるはずです。ここは面倒かもしれませんが、一人一人の個性を細かくみて、それに合うような(といっても2種類しかありません)接し方をすべきだと、私は考えています。
「色眼鏡」を外し、その人の良さを見るとこから始めてみる
まずは、“その人の良さ”だけを見るところから始めてみましょう。組織の中で働くことに慣れてしまうと、組織にアジャストしており、その歯車として機能しているという前提に対して評価しがちです。純粋にその従業員を個人として見ることができなくなってしまう可能性が大きいのです。そこからずれることによって生じてしまう“色眼鏡”を外すところから始めるのが重要です。
個人を丁寧に見ると、その人たちの個性が際立ってくるはずです。例えば「協調性は感じられるけれども、仕事に対する姿勢は消極的」とか、「仕事に対する一定のパフォーマンスは出すけれども、周囲への気配りが足りない」とか。そういう部分がくっきりと浮かび上がってくるはずです。
それを組織にアジャストする方向で修正するのではなく、あえて、個性を生かしたまま成長に導いていく、そのために、マネジメントを担当する皆さんができることを考えることが重要になってきます。粒を揃えて、同じような顔の同じような考え方をした、同じような能力の持ち主を大量に作りたいと、企業は考えているわけではありませんから。しかし、組織という大きな枠にとらわれてしまうと、結果として、そういう人材を再生産してしまうのです。
採用の意図をこっそり確認してみる
もう一つ。あからさまに個性が際立っている人材は、採用の意図が明確にあるはずです。それを人事担当者にこっそりと確認してみることを、ここではお勧めしておきます。
例えば、人とはうまく接点が持てないけども、スキル的には目を見張るものがあるという人の場合。その“目を見張る部分”を評価し、そこに企業としては期待しているのに、結果的にその部分ではないところを指摘され、修正され、結果的にあらゆるものがスポイルされていく、という事態は当然避けなければなりません。しかし、採用の意図を理解しない現場担当者は、そういう人材は使いにくいと思い込み、最後には潰してしまいかねません。
今の時代、「多様性」という言葉が大きく取り沙汰されています。組織には多様性がないとダメなのだと。ただ、現実にはそれはとても難しい。多様性のある組織作りとは、そこに属する組織のメンバー全員にとって「普通に考えて」や「常識だろう、それ」というセリフを捨て去る覚悟を求められる、ということでもあるのです。
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。