2015年1月。ジャパネットホールディングスの新体制発足に伴い、新社長、高田旭人氏の秘書として抜てきされた田代薫さん。「秘書1年生」の彼女の一日に密着した。

叱られてデスクで泣いたことも

「はじめのうちは緊張するあまり、社長とどう接したらよいのか、距離感が全くつかめませんでした」

2015年1月。ジャパネットホールディングスの新体制発足に伴い、新社長、高田旭人氏の秘書として抜てきされた田代薫さん。

ジャパネットホールディングスHD広報・秘書室 秘書 田代薫さん

現在、秘書経験を持つ先輩、米田哲郎チーフの指導の下、社長秘書を務めている。

日々の業務において、常に先回りをして臨機応変に対応することが求められる秘書の仕事。秘書1年生の田代さんにとって、いまは、指示されたことを素早く正確にこなす段階から「なぜ、この仕事を任されたのか」、その背景を自分の頭で考えて行動することが求められるフェーズだとか。

とはいえ、「何事も納得しないと前に進めないので、立ち止まってしまうこともある」という。思わず、「叱られて、化粧室で泣いたことはありますか?」と尋ねたところ、「デスクで泣いてしまったこともありました。でも社長の前では絶対泣かないと決めているんです」と即答。

そんな田代さんの半年を広報兼秘書の責任者である米田さんはこう振り返る。

「『私はこう考えてやったんです』と最短コースのつもりの選択が、俯瞰(ふかん)してみれば、ある部署を通さなかったことで迷惑がかかってしまい、結果、回り道となったケースもありましたね」

役割として会社組織全体に与える影響力が大きい部署であるため、つい厳しい指摘をせざるをえないのが指導役の米田さん。

言葉を選びつつ、こう続けた。

「心が強く、頑固な一面もあるが、周囲からのアドバイスを素直に受け入れられる人」。叱られたことにきちんと耳を傾け、次に生かそうという受容力がある。だからこそ、伸びしろが期待できるのだ、とも。そもそも、「何を言っても響かない人を叱ったりしませんから」。

そう。米田さんの言葉はすべて愛情に裏打ちされた助言なのだ。もちろん、それは田代さん自身の頑張りもあってこそ。

【左上から時計回りに】広報秘書室:社長秘書2人、役員秘書1人、広報3人、ドライバー1人の7人の体制。/メモをする:アテンド、出張手配などに加え、スケジュール管理を引き継ぎ中。/資料づくり:8時30分に出社し、9時からの会議に備えるのが日常。手早く、正確に。/先輩たちと:PC画面から顔をあげて、和やかに談話中のひととき。/広報チームと:社長の取材を広報と共有し、把握するのも秘書の大切な業務。/ 厳しいことを言わねばならないのがチーフの役回り。後味よくすぐにフォローも。

成長ぶりを見守ってきた社長はどう見ている?

「常にレベルアップし続けていきたい」という田代さんは、日々の業務のかたわら、秘書検定の勉強や今後、海外メーカーとの取引が増えていくことを見据え、ビジネス英語の習得にも余念がない。

その一方で「常に緊張を強いられる社長を瞬時にリラックスさせ、素の状態に戻す。その場をたちまち柔らかい雰囲気で和ませるところが田代さんの強みだ」と米田さんは評価する。果たして、この半年間、もっとも近い距離で田代さんの成長ぶりを見守ってきた高田旭人社長はどう見ているのか。

ジャパネットホールディングス 髙田旭人社長「『取材される側』の気持ちが体験できて今日はよかったね」

「根っこの気持ちにホスピタリティーがあるから、これからもっと伸びますよ」。開口一番こんな答えが。実は新卒入社で配属された総務部門時代から田代さんの仕事ぶりを見ていて「心がいつも安定している」と感じ、秘書に適任だと判断したという。同期とワイワイなれ合うだけでなく、だからといって孤立もせず、バランスをほどよく保てる。田代さんに秘書に必要な才能があることを見抜いていたのだ。

「『一事が万事』とよくいいます。たとえば、ある社員が廊下にゴミが落ちていても拾わなかった。その事象をどう受け止めるか。点として見過ごすのか、面として持ち帰るのか。小さな出来事からその先にある隠された何かに気づくことができるか。想像するチカラを習慣に変えられれば、これから、さらに成長できるはず。期待しています」

田代 薫
ジャパネットホールディングスHD広報・秘書室 秘書。
2014年4月新卒入社。総務部に配属される。2015年1月、社内の戦略部門としてジャパネットホールディングスが新体制に。髙田旭人社長就任にあわせ秘書となる。留学経験があり、英語が得意。