男性同士の“あ・うんの呼吸”を言語化する

女性活用という掛け声ばかり威勢がよくても、男性の多い職場では何から始めていいのかわからないというのが現状だろう。日本たばこ産業(JT)では2013年7月に「多様化推進室」を発足、金山和香さんが初代の室長に就任。女性管理職を増やすプロジェクトの一環として全社の管理職1300人を対象に多様化マネジメント研修を行い、男性の意識改革に着手した。

「『あれやっといて』が通じないのがダイバーシティです」

【写真上】多様化推進室 室長 金山和香さん「『あれやっといて』は通じません!」【写真下】多様化マネジメント研修の様子。男性のさらなる要望を受けて、今年度は「ダイバーシティ部下研修」「イクボス研修」なども行っていくという。

研修では、女性をはじめ、広く「ダイバーシティ(多様性)」を考える管理職同士のディスカッションから始めた。男性ばかりの職場で見えにくかったことを可視化し、あ・うんの呼吸でやっていたことを一から言語化する。

「研修を通じて、『自分では部下に対する配慮ができていると思っていても、相手がどう受け止めているかはわからない。一方的に押し付けるのは厳禁だ』『会議の席では上司からしゃべらない。必ずみんなに発言の機会を与えるようにする』など、解決策が明らかになっていく。“女性活用”とは特別なことではなく、上司と部下のコミュニケーションとして、当たり前に大事なことばかりだと気づくのです」

研修でもっとも質問が多いのは、女性が部下になったときのキャリアプランをどのように一緒に考えるかということ。「結婚」や「出産」など、一歩間違えばセクハラになりうる質問でもある。

「ポイントは、興味本位ではなく、あなたのキャリアを考えているという態度を示すことです。『何月何日にキャリアプランについて面談したい』と予告したり、答えにくければ答えなくてもよいなど逃げ道をつくることも有効です」

JTでは男性のさらなる要望を受けて、今年度は「ダイバーシティ部下研修」という、女性部下とのコミュニケーションに特化した研修や、「イクボス研修」なども行う予定だ。

女性管理職を増やすために必要なのは、げたを履かせることではなく、コミュニケーションだと金山さんは考える。「何よりも普段から対話の機会を増やし、男性の部下同様に気遣っていることを示す。これが女性の意識を変えるのです」

金山和香
日本たばこ産業 多様化推進室 室長。2000年日本たばこ産業入社、郡山工場に配属。生産技術センター製造部、たばこ事業本部A&Eたばこ事業部などを経て13年人事部。同年7月から現職。

撮影=村林千賀子