原始的なものをITで実現する面白さ

私はメルカリのちょうど10人目の社員でした。

六本木のシェアオフィスは狭くて、小汚い。イメージどおり。ここで一から作り上げるんだと思うとわくわくしましたね(笑)。ほかのメンバーはほとんどがエンジニアで、管理する人がいません。最初の1年間は、ほぼ私1人で管理の仕事をこなしました。やることは山ほどありましたが、ゼロからつくりあげていくのは楽しくて、苦ではなかったです。

メルカリ 執行役員 掛川紗矢香さん

誰かが不要なものを出し、また別の人がそれを買う。メルカリは原始的な物々交換をITに乗せるビジネスなので、古いものと新しいものが混在しているのがすごく面白いです。SNS的な要素も強く、「これ、もうちょっとまけて」とか「まとめて買うので安くして」と交渉する人も多いです。売る側も「中古でちょっと汚れているから安くするね」「1個半端なのがあるから、これも付けちゃうよ」とコミュニケーションも含めて楽しめることがメルカリの最大の特徴です。

弊社は現在、日本だけで170人の従業員が在籍していますが、そのうち、100人がカスタマーサポートです。CtoCビジネスなので、買い手も売り手も個人のお客様のため、驚くほど質問が多く、迅速に丁寧に対応することが求められています。カスタマーサポートの重要度は非常に高いので、弊社では正社員か契約社員という雇用形態にしています。

女性社員も多いので、今後は産休、育休後の復帰をいかにスムーズにできる環境をつくるか、という点も重要な課題であると考えています。女性だけではなく、男性も保育園の送り迎えや病気のときの看病などができるよう、フレックス制を導入していて、今後もこのような社員のプライベートでの不安を取り除くことで最大限仕事に集中できるような制度を作っていきたいと考えています。

目の前のことをやっていたら執行役員に

15年2月に役員の辞令が出たときは驚きでした。従業員から執行役員になったのは私が初めてでしたから。ただ、目の前のことを懸命にこなした結果としてこの役職をいただけたと思っていますし、特別役員になるためにやったことはありません。役員であっても弊社はプレーイングマネジャーの要素が強いので、仕事そのものが大きく変わるわけでもありません。

現在、管理系の社員は13人ですが、そのうち7人のグループを統括しており、ほとんど年下です。前職でも10人弱のチームを見ていましたが、全員年上の男性でした。相手が違うので前職と今では自ずとマネジメントスタイルも変わってきます。

年上の部下は大変じゃないかと言われることがありますが、幸い、みなさん私を盛り立ててくれました。見守るような気持ちだったのだと思います。逆に今は、ときには「ついてこい」と強く引っ張る、姉ご肌のマネジメントですね。だから社内でも「掛川組」なんて呼ばれているんです(笑)。

月に2回ほどは1on1をして、「何か悩みない?」と話を聞きます。それは仕事でもプライベートでもいいんです。コミュニケーションを多くとることが重要で、その中で何か不安があれば気づくことができると思っています。彼らがどんなキャリアを築いていけば幸せになるだろうかといつも考えるようになりました。

管理職に尻込みしている女性へ

いまより少し難しい仕事を与えられたり、管理職のオファーがあったらぜひチャレンジしてもらいたいですね。困難にぶつかったら、周りに手助けを頼めばいいのです。会社は色々な機能をもった人たちが助け合って成り立っているんですから。

私は役員を打診されたときは断る選択はありませんでした。今までいろいろと経験してきて、せっかくつかんだチャンスです。それを活かすも殺すも自分次第。まだ立ち止まってきょろきょろすることも慌てることもありますが、幸い周りに優秀な仲間がいるので、どうしても困ったらヘルプを要請します。周りにいつも支えられているなぁと感謝しています。

女性は管理職になったらプライベートがなくなるんじゃないかと心配している人もいるでしょう。正直、私はオンとオフの切り替えを考えたことがなく、メルカリに入社したときも元旦からメールをしてました(笑)。でも、それは楽しいからであって、強いられたわけではありません。楽しんでできる環境を作りながら仕事ができれば、役職に関係なく頑張ることができるのではないかと思います。

●掛川さんのキャリア年表

2004年(22歳) 東京女子大学卒業後、ベンチャーに入社
2005年(23歳) 株式会社GDH(現ゴンゾ)に入社/財務、経理、人事、子会社IPO準備等に従事
2009年(26歳) グリー株式会社に入社/海外子会社の立ち上げを担当、グローバルアカウンティングマネジャーに
2013年(30歳) メルカリに入社/コーポレート部門の立ち上げ、米国子会社設立
2015年(32歳) 執行役員就任

■仕事道具
・スマホ2つ:オフィスに固定電話はなく、すべて携帯で受ける。
・らくらくメルカリ便のビジネスパートナーであるクロネコヤマトのクッション:抱えながら仕事をしている。