2015年8月28~29日、東京・高輪で開催された、政府主催「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム―WAW!(World Assembly for Women) Tokyo 2015」。第2回となる今回は、26カ国・6国際機関、約100名の各国リーダーが参加した昨年を凌ぎ、40カ国以上・8国際機関、約150名の各界トップリーダーが参集する大きな催しとなった。ここでは28日のオープニングの様子をレポートする。
女性活躍推進法成立~新風の吹く中で
開催初日の8月28日は女性活躍推進法が成立し、政府が本腰を入れて日本経済への女性参画の重要性を示す形となった。
今回のシンポジウムテーマは「WAW! for All」。さまざまな立場や世代の女性・男性がともに考え、行動することを目標に実施され、初日の一般参加者は外務省の発表によると約1300人、ティーンエイジャーからシルバー世代まで、幅広い年齢層が集まった。また参加者の中には男性の姿も多く見られ、会場は参加者の熱気に包まれていた。
安倍首相はオープニングの挨拶の中で、女性活用を促すために、まず男性中心の長時間労働を評価する働き方文化の是正が必要だと述べた。限られた時間で効率的に働くこと、またその働き方を評価する企業文化を広げ、女性も男性も、生産性の高い仕事と豊かな生活を無理なく両立でき、実りある人生を送ることができる社会を目指す、とした。それらを実現するために、ジェンダーダイバーシティの推進に男性参加を促した。
また2016年に行われるG7サミット議長国の日本として、女性と自然科学・技術、女児教育を含むエンパワーメント、女性と健康・保健、女性と起業などを重視していくとし、シンポジウムに集まった各国のトップリーダー達にも、安倍政権が目指す女性活用の未来像を強く印象づけた。
各国・各界のトップリーダーが集結!
ジェンダーダイバーシティへの提言
8月28日、安倍首相の挨拶に続き基調講演を行ったのは、ノーベル平和賞受賞者でリベリア大統領のエレン・ジョンソン・サーリーフ氏、ロッキード・マーティン・コーポレーション会長、社長兼最高経営責任者のマリリン・ヒューソン氏の2名だ。
続いて、UN Woman事務局長のブムズィレ・ムランボ=ヌクカ氏、そして日本経団連の榊原完征会長の2名が挨拶のために登壇した。榊原氏は挨拶の中で、これら女性を取り巻く試みは“日本の経済成長戦略である”と述べ、男性側の働き方に対する多様化とダイバーシティマネジメントの必要性にも触れた。
さらにこの日は、2つのテーマ「女児と教育」、「ダイバーシティとリーダー」についてパネルディスカッションが行われた。ここでは「ダイバーシティとリーダー」のパネルディスカッションの一部を紹介しよう。
パネラーは国連開発計画総裁のヘレン・クラーク氏、ハーバード・ビジネス・スクール教授のリンダ・A・ヒル氏、スウェーデンの政府男女平等雇用委員会委員でNovare社CEOのフレデリック・ヒレルソン氏、BTジャパンCEOで日本経団連役員でもある吉田晴乃氏の4名、モデレーターは「ウーマノミクス」の提唱者、ゴールドマン・サックス証券副会長のキャシー松井氏が務めた。
自らが“ゲームチェンジャー”になる、という覚悟
国連開発計画のクラーク総裁はニュージーランドで初の女性首相となった人物だ。「前職の首相になるに至るまで、女性初と言われるリーダーのポジションを数多く経験し、さまざまな“ガラスの天井”を破ってきた」と笑う。それらのタフな自分を形成したベースには、ニュージーランドに平等な教育の権利があったからだと言う。またリーダーに必須なのは、男女問わずにネットワークだと説き、ダイバーシティは永続性のある変化をコミュニティや社会に与えるが、そのためにはジェンダー平等が必須、なぜなら人口の半分は女性なのだから、と自身が歩んできたキャリアを振り返り、力強くメッセージを発した。
ハーバード・ビジネス・スクールのヒル教授は、リーダーについて次のように語った。「女性がリーダーシップを発揮するためには、さまざまな条件が必要でしょう。まずは組織としてスターを育成しなければならない。能力のある人材に適切なOJTを施すのです。行動や経験からしか学びはありません。まずはやってみなければ。その上で女性自身も、変化をもたらし時代を変えていく“ゲームチェンジャー”として機能する、という意識を持つこと。さまざまなギャップを埋める役割を担うのです」。また重要なのは、違いを最小限にまとめるのではなく、組織の文化や能力を調整し、人々の違いを最大限に利用して、ブレークスルー型のイノベーションや問題解決を図ることだと言う。それらが今リーダーに求められていることなのだ。イノベーションを成功に導く鍵は、多様性にあることに間違いはなさそうだ。
BTジャパンの吉田氏は、ジェンダーダイバーシティが叫ばれる今、“和”の精神、ハーモニー(調和)が必要だと説く。そこから持続可能な未来像と対峙ではなく包括する策を見い出す、という精神性に訴えた。またダイバーシティなしに今後成長の道はないとし、さらにその上で、リーダーとなるために、風を起こす人であれと、聴衆に訴えた。
スウェーデン政府男女平等雇用委員会委員のヒレルソン氏は、5人の子供の父親だ。自国の男性参加型の育休制度を紹介し、日本の追随を歓迎するメッセージを残した。現状日本では、育休を取得した男性社員への冷遇が少なからず横行している現実がある。一方でイクメンなど、子育てに積極的な男性は増加しているが、全体の環境を考えると育休の取得まではなかなか浸透が難しい。ヒレルソン氏によると、スウェーデンでは子供を抱っこする男性を“マッチョ”だと見なすらしい。日本男性の進化形、マッチョ型イクメンの出現……そんな日が待ち遠しい。
働き方と生き方を考える、この秋のイベントをチェック
シンポジウムの2日目、8月29日の分科会でどんな意見が交わされたか、「PRESIDENT WOMAN Online」では追ってレポートを掲載する予定だ。
また今回のシンポジウムに関連し、2015年10月31日まではシャイン・ウィークスと称して、日本と世界の各地で公式サイドイベントが引き続き開催される。「WAW! Tokyo 2015」の趣旨である「女性が輝く社会づくり」に賛同し、政府認定を受けた団体、企業によるプログラムが多数ある。詳しくは下記、外務省のホームページを参照してほしい。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page23_001408.html