ロコモとは、ロコモティブシンドロームの略。「運動器症候群」とも呼ばれ、その名の通り、骨や筋肉、関節などの運動器が衰え、立つ、歩くといった暮らしの中の自立度が低下することで、寝たきりや要介護になる危険度が増していきます。
歩けない・立てない・寝たきり・要介護――と聞いてもピンと来ないかもしれませんが、その数、予備群を含め推定4700万人! 実に国民の3人に1人にのぼります。 ロコモはメタボ(メタボリックシンドローム)に続く国民病として予防の強化が急がれています。3回目の今回は、ロコモ予防の食事の摂り方をお伝えします。

ロコモリスクを減らす、3つの要素

男性に比べて骨も筋肉も華奢で弱い女性。食からロコモ防ぐためには「骨を丈夫にする」「適正体重を保つ」「バランス良く食べる」ことを意識しなければなりません。しかし今、20代、30代、40代の女性に、その意識以前の問題“食事を摂らない”人が増えています。

厚生労働省発表の最新のデータでは、20代、30代、40代、それぞれの1日の摂取カロリーは1600kcal代にとどまっていて、この数値はなんと70歳以上と同じ水準!

食事を必要以上にセーブしたり、偏った食事を摂るなど、健康を無視したダイエットが背景にあるようですが、「忙しいから食べることは後回しにしがち」「動かないからお腹も空かない」「朝は寝ていたい」などダイエット以外の理由も多くなっています。

その弊害は運動器にも表れています。骨粗しょう症は本来60代からの発症が多かった骨の病気ですが、近年ではどんどん若年化が進んでいます。さらに20代~40代女性の中には根強い痩せ型願望があり、ロコモはもちろん、貧血や不妊のほか、摂食障害といった心のトラブルを招きかねず、注意が必要です。

極端な痩せ体型になっていませんか?

太り過ぎはもちろん、痩せ過ぎも、ロコモ予備軍へ一直線ということになりかねません。健康寿命を延ばすためにも、まずは、自分の適正体重を把握しましょう。

【A】の数字「22」がBMI値の標準値で、もっとも病気にかかりにくい値とされています(日本肥満学会)。下表を参考に、自分の適正体重範囲を把握し、痩せ過ぎ、肥満にならないように気をつけましょう。

肥満度の判定基準(日本肥満学会2000)

【A】身長から適正体重を知ろう
身長(m)×身長(m)×22=適正体重

【B】現在の体重と身長から肥満度を知ろう
体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))=BMI値

女性らしい仕草を支えるしなやかな運動器

ゆったりと美しいお辞儀、かがんで履物を揃える姿、すっと背筋が伸びた美しい立ち居振る舞い、これらの仕草は、筋肉や関節や骨、“運動器”のしなやかさが保たれていればこそできる女性らしさの1つ。栄養バランスを無視した食習慣や、過剰なスレンダー志向、食事制限だけのカロリーコントロールは、女性らしさも奪っていくのです。

Vol.2でご紹介した運動習慣とともに、バランスのとれた食事も意識して、しなやかな運動器を持った、立ち居振る舞いの美しい女性を目指したいものです。

体をつくる5大栄養素

仕事や子育てに忙しくしていると、自分の食事が疎かになりがちです。10年後に健康であるために、毎日の食事から体を整えていきましょう。

運動器の健康を保つのに欠かせず、また私たちが生きていくために必要な栄養素は5つ。炭水化物/脂質/タンパク質/ビタミン/ミネラルです。改めて、それぞれの役割や特徴を知っておきましょう。

【炭水化物】エネルギーとして利用される。特に脳の働きに必要で、不足すると思考力が低下したり疲れやすい体に。

【脂質】体温を保ち皮膚を保護し、血管の柔軟性を保つ。アボカドやオリーブオイル、なたね油、魚(DHAやEPA)など、健康だけでなく、美容にもうれしい脂質を選んで。

【タンパク質】筋肉や骨、血液に欠かせないほか、健やかな肌と髪をつくる栄養素。牛乳や豆類、鶏肉などに多く含まれる。

【ビタミン】多くの野菜や果物に含まれる。不足すると疲れや肌荒れ、めまいなどの体調不良を引き起こしますが、摂り過ぎも不調の原因に。通常の食事では心配ありませんが、サプリメントの摂り方や量には注意すること。

【ミネラル】骨や歯をつくる栄養素。肌のターンオーバーを促したり、ツヤのある髪にも欠かせない。体内ではつくられない&貯蔵できないものも多いので、海草類、魚介類、豆類などの食事から摂る必要があります。

食事はおいしく楽しくが基本。栄養素のことばかり考えていては窮屈で、決めたことも長続きはしません。理想は5大栄養素を1日3回の食事からバランスよく摂ることですが、働いていれば、朝は忙しいし、おつきあいの夜もあります。1日単位で3食合わせてバランスを考えたり、1週間単位で無理なく整えるようにしましょう。

カルシウム貯金、開始!

カルシウムは、5大栄養素のミネラルに分類され、成人女性の1日あたりのカルシウム推奨量は650mgです。しかし、実際には全ての世代で200mg以上不足しています。カルシウムは骨に蓄えられ、必要に応じて骨から溶け出しますが、不足した状態が長く続くと、カルシウムはどんどん溶け出し、骨はやがてスカスカに。ちょっとしたことでも骨折しやすい状態(骨粗しょう症)になってしまいます。

骨は毎日生まれ変わるため、意識したその日からカルシウム貯金を開始できます。コツは、カルシウムの吸収率を上げるたんぱく質、ビタミンD(魚やキノコ類)やビタミンK(豆類や青菜)などを一緒に摂ること。一方、カルシウムの排出を促す作用がある塩分やカフェインは摂り過ぎに注意が必要です。

筋肉を強くする、おいしい習慣

ロコモを防ぐためにパワーアップさせたい筋肉。といってもムキムキボディを目指すのではなく、あくまでもしなやかな女性でいるために、です。また、筋肉量は基礎代謝量に比例。筋肉が増えれば代謝量もアップするため、太りにくい体がキープできます。

筋肉に重要な栄養素はたんぱく質で、肉、魚、卵、乳製品、大豆製品に多く含まれています。ビタミンB6が豊富な赤身の魚や赤ピーマン、キウイやバナナなどを合わせて摂り、たんぱく質の分解や合成をフォローしてあげましょう。

※次回の「健康寿命考 ロコモティブシンドローム」は【親のロコモが心配!】をテーマに7/15の掲載を予定しています。