Q 人口減少のなか日本の女性労働者数は増加しています。この変化を海外はどう報じているのでしょうか?

安倍首相が政権を発足させ、「アベノミクス」を推し進めてから2年。その中核を担う、女性活用を謳う「ウーマノミクス」も真価が問われ始めている。「ウーマノミクス」の進展具合について、フィナンシャル・タイムズ紙(FT)などが鋭く分析している。

2014年12月7日のFTは「望みは、より多くの日本女性が労働力となることで成長が向上すること」と題して、ウーマノミクスについて論評した。

まず、ゴールドマン・サックスのストラテジスト、キャシー松井氏の言葉を引用し、安倍首相の就任以降75万人の女性が労働力に加わり、女性の労働力率が3%上昇したことに触れ、ウーマノミクスには一定の効果があったことを示した。

また、女性の就労のネックの1つとなっている育児支援については、待機児童解消のために2018年までに40万人分の保育の受け皿の確保を目標とし、中期目標である「2015年4月までに20万人分」に向けて、19万人分を増加させた、という内閣府男女共同参画局長の武川恵子氏の発言を紹介している。

さらに、育児休業給付金が180日間は50%から67%に引き上げられたことや、女性の活躍推進に優れた上場企業を選定する「なでしこ銘柄」の創設などを取り上げ、政府の取り組みを紹介している。

しかしながら、手放しでは評価していない。まず、武田薬品に初の外国人COOとして就任したフランス人のクリストフ・ウェバー氏の「自分のチームに女性がいないのは今回が初めてだ」という言葉を引用して、日本の企業での女性管理職率が先進国でも極めて低いことを指摘。

その理由の1つとして、日本の企業文化が男性中心のものであるとし、それが女性の受け入れを阻害していると述べている。その男女格差については、2014年11月27日掲載のウェブ誌、ディプロマットの記事が詳しく伝えている。

記事は世界経済フォーラムによる世界の男女格差に関するリポートの2014年版(Global Gender Gap Report 2014)を基に書かれているが、日本の男女格差でのランキングは恐ろしく低い。リポートは、142ヶ国での、健康・教育・経済・政治の分野における男女の格差を調査したもの。日本は104位で、アジア各国のなかでも最下位グループに属している。

トップ5は、男女平等を推し進めることで知られた北欧の国々が占めているが、9位にフィリピン、ニュージーランドが13位、オーストラリアが24位、続いてモンゴルが42位。シンガポール、ラオス、タイがそれぞれ59位から61位、スリランカで79位となっている。

リポートによれば、過去10年間に経済と政治の分野に進出する女性が増加したことが主な理由で、男女平等が進展したとのことである。

FTは、ウーマノミクスの課題を、政策に具体性が欠けていること、またエリート女性を対象としていること、上の世代の考えが変わる必要があることを、経済学者の浜矩子氏と慶應大学の経済学者、嘉治佐保子氏の言葉を引用して提示。

また、アメリカの公共放送であるNPR(National Public Radio)がサイトに掲載した2014年12月3日の記事で、女性のための新聞「ふぇみん」編集者の柏原登希子氏の言葉を引用して、アベノミクスではトップ1%ほどの人が恩恵を受けたかもしれないが、女性や低所得者層は恩恵を受けていないことを指摘。しかし、同記事はウーマノミクスのプログラムによって林業の訓練を受け、製材所で働く女性を紹介し、少なくともウーマノミクスで活路が開けた女性がいることを紹介。

具体的な方策や管理職以外への雇用促進など、ウーマノミクスに課題は残るものの、成果があったことも記している。