少子化と相関する3つの数字

今回の選挙の争点にも「子育て」「少子化、人口減少」「女性活躍」「働き方」などが、どの党にもあげられていましたが、今ひとつメインの争点にはならなかったですね。

「女性活躍」と「少子化」の関連が曖昧なままという方も多いと思います。

「女性活躍を推進するのは成長戦略としては良いとしても、少子化を促進するのでは?」「女性は家にいて子育てをしてもらったほうが子どもが増えるのでは?」と言ってくる方が必ずいます。

しかし、成長戦略という観点を抜いても、「女性活躍」と「少子化」は両輪です。

先進国の例で見ると、少子化と相関する数字は3つあります。ひとつは「女性が活躍する国ほど少子化ではない」という相関です。逆に言うと女性が活躍できない国、働けない国ほど少子化が進んでいる。2009年からこの数字は連動してきています。女性の社会進出が進むと「女性が働くから子どもが減る」状態が一時はやってきますが、その後は「女性が外で活躍するほど子どもが増える」になります。うまくいっているのは女性の労働参加率が高い北欧、フランス、アメリカなどです。一方、日本、韓国、イタリア、ギリシャなどは、女性がうまく働けず、子どもも産まれない国となっています。

2つ目は「男性の家事・育児時間」です。「男性の家事育児時間が少ない国ほど少子化」で、これも日本は最低ラインのところにあります。日本の6歳未満の子どもがいる男性の家事・育児時間はわずか。これもくっきりと連動しています。

3つ目は後ほど書きますが、この2つを見る限り、「女性がちゃんと働き、男性もちゃんと家事育児をやる」ことで出生率が上がります。つまり女性の「産む×働く」と男性の「子育て×働く」がうまくいかない国は少子化……ということになります。

現在私は、「あらたな少子化社会政策大綱策定のための検討会」の有識者委員をやっています。今回多くの委員から出されたのが「仕事」という論点です。ある委員が「人間起きている時間の5割以上を会社で過ごす。会社が変わらなければ、何も変わらない」と訴えました。本当にそのとおりですね。そろそろ「自助努力」は限界にきています。

私も「両立できる安定した仕事が男女ともにあること」が、子どもを産みたい女性が産むために一番必要なことだと思っています。その安定した雇用を創出するのは企業です。

どんなに本人がワークライフバランスを取りたいと思っても、会社が変わらなければ難しい。ママが仕事と子育てを両立したい、そしてパートナーであるパパも一緒に子育てしたいと思っても、長時間労働では男性の時間は会社にとられている。ママのいる課のほかの人は長時間労働をしている……では、何も変わらない。

ワーキングマザーはよく「仕事が定時に終わる、または夫が必ず早い時間に家に帰ってくる確信があれば、時短や長い育休もとらなくていい」と言います。ワーキングマザーはもういっぱいいっぱい。パートナー、そして会社が変わるべきときなのです。

「子育て女性が3割」の時代の働き方改革

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女性の活躍と出生率の関係

「24時間働く社員がいい社員」のまま、女性だけ「子育て期は優しくします。早く帰っていいですよ」では、もう限界がきているのですね。

まずは数の限界。出産して働き続ける女性が多くなったからです。少数なら「配慮」や「例外」で対処できる。しかし今後子育て期に入る女性が3割以上となれば、「マミートラック」ももう満杯。「君だけ早く帰っていいよ」も限界です。人出不足になります。女性だけでなく、男女ともに全体の「働き方改革」が必要となります。気が付いている企業はすでに、「両立支援」「女性活躍支援」だけでなく、「全体の働き方」に目線をすえています。

もうひとつは、男性だけが働いて一家を養い、それで子どもが増えて行くという構造の限界です。こちらは子育てにも重要ですが、まずはその前段階の結婚に関わること。養える男性の数の限界が結婚の数の限界です。これを突破するためには、「養える男性を増やす」というのは難しい。なぜなら産業構造が変わり、男性が稼げる仕事が減っている。むしろ、今後日本で活況になるであろう産業分野は女性が働きやすい看護、保育、介護、医療などの分野です。

私が経団連のえらい方に「女性を雇い続けるか、男性の給料2倍にするか、どちらかしかないです」と言ったら、「男にだけ、そんなに払えないなー」と苦笑されました。

ファイナンシャルプランナーの花輪陽子さんの言葉を借りると「リスク半分、収入2倍」の共働きファミリーで子育てのリスクをとっていくのが現実的です。

私の考える少子化対策は「働きたい女性も働きたくない女性も働いて子育てできることが当たり前になる。男女ともに仕事も家事育児もやる社会」です。

結婚を増やそうとすると「男性の非正規を正規に」となりがちですが、男性の正規雇用だけ増やしても結婚は増えません。正社員だけでなく女性の労働の半分以上を占める非正規雇用を考えれば、今の女性たちは「非正規から結婚」を望むのではなく、「非正規から正規社員、それから結婚」となるのです。つまり男性の稼ぎがそれほどないことがよくわかっているのですね。「働きたい女性」だけでなく、「働かざるを得ない」女性にも両立できる安定した仕事は必要です。

消滅可能性都市の問題も、「20代、30代の女性が出て行ってしまうこと」が大きいですが、その原因は「仕事」です。地方には仕事がない。非正規の仕事しかない。だから仕事を求めて都市に向かってしまう。仕事さえあれば地方にとどまることができるのに。

「両立できる雇用」を増やした地域が勝つ!

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男性の家事・育児時間と出生率の関係

正規社員の女性が出産後も切れ目なく仕事を続けられることだけでなく、非正規社員の女性が「両立しながら働き続けられる」こともすごく重要です。

これだけマタハラが騒がれていても、「妊娠しました」と言った途端「雇いどめ」になってしまった非正規社員の話、「復帰しないで」と言われる正社員の話、どこにでも転がっています。これでは安心して子どもは産めません。出産=世帯年収が半分になるわけですから。そんな未来がわかっていたら、今の女性は「結婚=子ども」なので、結婚に向かおうとする気力もなくなります。

例えば、共働き県は福井、山形、富山などですが、福井県は特に出生率が高い。なぜなら女性の正規社員が多いからです。安定しない両立できない仕事がいくらあっても子どもは増えないのだとよくわかる構図です。

消滅可能性都市に講師として呼ばれることが多いのですが、女性がいない県は「嫁募集」をするよりもまず「女性の雇用と定住セット」で対策するほうがいい。「女性が両立できる雇用を増やした地域が10年後には勝つ」といつも言っています。

そして少子化と連動する3つ目の数字は何か?

なんというか「良妻賢母嗜好度」とでもいうのでしょうか? 「良妻賢母が好きでない国の方が出生率が高い」というものです。(ニッセイ基礎研究所 天野馨南子 研究員の眼2014年11月4日)

少子化の国は「日本、イタリア、ドイツ、韓国」など「伝統的家族観」が強いところ。当然良妻賢母が良しとされます。イタリアなんか「マンマ」の国ですし。

この「良妻賢母」へのプレッシャーが女性には「重すぎる」のも、ひとつの少子化の要因でしょう。先日「結婚したら時短がとれるといい」という女性の意見がありました。結婚しただけで時短?

それは「良妻」になるための「良妻時短」ということです。

しかし共働きと良妻の両立はとても難しい。専業主婦だって大変なのに、両立しながらの良妻賢母は女性を追い込む、辛い思想です。男性だって「良夫賢父」はプレッシャーではないでしょうか? 良妻賢母思想が強い国ほど、女性は「よほどの尽くし甲斐のある男性じゃないと、結婚できない」と思って、ますます結婚へのハードルが上がるのです。

「男女ともに、それほど辛くなく両立できる、安定した仕事」があることは、少子化に大きく貢献します。個人ではなく、今企業がどれぐらい「少子化に貢献」できるのかが問われています。しかし、ただ「協力」というのも難しい。国からのプレッシャーが必要です。あるイクメンの男性は「男性の育休取得や子育て中の男性の働き方など、規制してくれたほうがやりやすい」と言っていました。規制があれば、顧客に対しても「すみません。長時間労働は禁止で……。うちコンプライアンスが厳しいので」と言い訳できるというのです。

労働時間の上限を決めた上での柔軟な働き方改革、女性の活躍度の見える化、マタハラ禁止の徹底、非正規社員の雇用の安定など、罰則を決めるのか、それともインセンティブを用意するのか、待ったなしの対策が求められます。

白河桃子
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。講演、テレビ出演多数。経産省「女性が輝く社会のあり方研究会」委員。著書に『女子と就活』(中公新書ラクレ)、共著に『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』(講談社+α新書)など。最新刊『格付けしあう女たち 「女子カースト」の実態』(ポプラ新書)