■編集部より指令

女性の活躍推進が進むなか、登用された女性への風当たりはまだまだ強い。

重要なポジションについた女性が気をつけるべきこととは?

■佐藤留美さんの回答

管理職たるもの、嫌われてなんぼ
http://president.jp/articles/-/13811

■大宮冬洋さんの回答

ポジションが上がるとついしてしまう言動

失意泰然得意淡然(しついたいぜんとくいたんぜん)。

女性の先輩と食事をしていて、「好きな人のタイプは?」という今までの人生で300回ぐらい発した定番質問を投げかけたときの先輩の答えです。仕事や生活がうまくいってもいかなくても品位と平常心を失わない人が好き、ということですね。

失意のときは卑屈になり得意のときは傲慢になる僕は思わずうなだれてしまいました。でも、先輩は「好きな男性のタイプ」だけを指していたのではなく、同性である女性に対しても「失意泰然得意淡然」を求めていたのだと今さら思います。どんなときも飄々として朗らかな人って、性別と関係なくステキですからね。

重要なポジションについた人には2つの「風当たり」があると思います。1つは自ら起こしてしまう風当たりです。権限や収入が大きくなると、付き合う人の幅が広がりますよね。使用するサービスや購入するモノも変わっていきます。すると、今まで付き合ってきた人(うだつのあがらない同期など)が色あせて見えるものです。で、思わずこんな発言をしてしまいます。

「こないだA社の○○部長とB省の××局長と赤坂の料亭で食事したんだけど、出世する人たちはやっぱりオーラが違うね!」

違うねって誰と比べているんだよ……。同期たちが白けた気持ちになるのは必至です。あなたは彼らをコケにするつもりなどはなく、むしろ自分の体験と感動を共有したいだけなのでしょう。でも、自慢をしたいという欲望がゼロだとは言えませんよね。あなたに追い抜かれて卑屈になっている人たちはその欲望を敏感に察知します。要注意です。

でも、この喜びと興奮を誰かに伝えたい、自慢したい。男性の場合は彼女や奥さんに聞いてもらうこともできますが、女性の場合は難しいことが多いですね。年齢や業界が近い彼氏や旦那さんだと嫉妬してふてくされてしまう危険もあります。

おすすめなのは、自分とは10歳ぐらい年齢が違う賢い先輩後輩に話を聞いてもらうことです。あなたと競争する立場にいない彼らは冷静かつ客観的なアドバイスをしてくれることもあります。

僕にもときどき会う18歳上の先輩ライターがいます。あるときおしゃべりしていたら、「5年~8年周期でスランプがやってくるよ」という話を聞きました。今どんなに調子よく働いていたとしても、そのうち行き詰まり感を覚えるようになり、しばらくモヤモヤが続いた後に、また少しずつ調子が上がっていく、とのことです。加齢とともに能力や仕事に求めるものが変わっていくことが原因かもしれません。景気の波のように、個人にも「好調不調の波」があるのですね。

30代前半で3年間の大スランプを経験し、30代後半の今はすっかり晴れやかな気持ちになっている僕も、「いずれまたスランプが来る。そういうものだ」と尊敬する先輩から言われて、少しだけ平常心を取り戻しました。あまり調子に乗っていると、やがて訪れる失意のときの下げ幅が大きくなり過ぎ、かつてのバブル紳士たちみたいに失踪しかねません。気をつけたいです。

受け流すことも必要

さて、もう1つの「風当たり」について。これは不可抗力の風です。抜きん出て重要なポジションにつくと、それだけで羨望や嫉妬の対象になります。まったく知らない人から面白半分の悪口を言われたり、何年も会っていない人があなたの恥ずかしい過去を暴露したり。ネットが発達した現在では、風速が増しているような印象を受けます。

ただし、この風はしょせん無責任かつ刹那的なものなので、悪質なものを除けば「受け流す」ことが肝要だと思います。1カ月もすれば風は静まるでしょう。

自分自身を振り返ってみればわかりますが、羨望や嫉妬の感情は失意のときに増幅します。寂しくて不安で退屈で、意味もなく攻撃的になるのです。我ながら醜かったな……。失意のときに泰然としていられない暇人たちとまともに向かい合う必要はありません。淡然とやりすごしましょう。

大宮冬洋
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。ビジネス誌や料理誌などで幅広く活躍。著書に『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、共著に『30代未婚男』(生活人新書)などがある。
実験くんの食生活ブログ http://syokulife.exblog.jp/