■編集部より指令

男社会で働き続けているうちに考え方から行動までオジサン化してしまって、これはいかん! と思うことがあります。オジサン化を防ぐ方法はないでしょうか。

■大宮冬洋さんの回答

会社に染まる自分に歯止めをかけるには
http://president.jp/articles/-/13037

■佐藤留美さんの回答

「アネゴ肌」のつもりが……

女性でも出世した人は、「オジサン」みたいな人が多いですよね。

部下を褒めたり叱責したりする声がやたらとデカい。押しが強くて、最後は絶対自分の言い分を通す。

飲み会での話題は、ほとんどが自分の「過去の武勇伝」。しかも、同じ話を何度もする。

そして、自分と同じ出身大学だとか、同じ出身地、同じスポーツの愛好家らをやたら可愛がる。

同じ女同士のくせに、自分と同じ上昇志向の強い女はすぐライバル視して、排除しようとする。

かといって、長い間、産休・育休を取ったり、復帰後も短時間勤務で働く、子育て中の女性社員を「使えない」などと言って鞭をたたく……。

本人はアネゴ肌を気取っているが、実は女性陣の誰からも慕われていない……。

組織でエラくなる女性は、残念ながら今のところ、そんな「オジサン姐さん」が多い印象です。

出世する女性のもう一つのタイプ

もしくは、「ホステス姐さん」ですね(念のために申し上げておきますと、私はプロのホステス業の方には、敬意を払っております)。

お偉方のオジサンの「褒め役」「聞き役」に徹し、絶妙な間合いで合いの手を入れて、懐にスッポリおさまる。

会議や営業資料を作ってあげる、会議中に言葉に詰まったオジサンを巧みにフォローする、オジサンが欲しがる隣の派閥の情報を提供するなど「女房役」を完璧にこなし、気が付けばあれよあれよという間に人をも羨むポジションに君臨――そんなタイプもたまにお見受けします。

世に言う「女子アナ」と呼ばれる種族のほとんどは、このタイプに属するのではないでしょうか。女性の政治家にも多い気がします。

正直、私はどっちの「姐さん」にも、お仕えしたくないですね。

でも、「オジサン姐さん」も「ホステス姐さん」も、本人が好き好んで、そうなったとも思えないんですよね。

言うまでもなく、日本の会社は完全な男社会です。しかも、年功序列色が未だ強い。つまり、日本の会社の大半は、オジサンが仕切っています。

そして、そのオジサンたちは、何より同質性を好む傾向が強い。

部長が白シャツを着るなら自分もそれを着る、上司のヘアスタイルが七三なら自分もそうするといった具合です。

だからこそ、出世するのはお偉方が「若いころの自分を見ているようだ」と言うようなタイプばっかり……。

このような環境下において、ただでさえアウトサイダーの女性陣は、自分も必死で男性社員に同化するか、あるいは、自分は男性陣より一段下の扱いで結構と開き直りホステスのごとく男性陣にかしずくより術はなかったのかもしれません。

ありのままで持ち味を発揮する

でも、同質的な集団が強みを発揮したのは過去の話です。

「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代は、欧米が先に開発したものを真似していればよかったし、消費者も「3種の神器」など決まったモノを欲しがる時代でした。

だから、同質集団が大量生産で一気にモノづくりする強みが生きた。

ところが、今の市場はそんなに単純ではありません。

先進国の消費者ニーズは多様化する一方で、新興市場には眠れるニーズが埋もれています。

それらを、他社に先駆けて掘り起こすには、国籍や性別を問わない多様な人材が感度を発揮する組織運営が必要です。

だからこそ、今、各社でダイバーシティ(多様性)が重要な経営戦略の一つになっているのは言うまでもありません。

「レリゴー、レリゴー♪」のアナ雪ではありませんが、従業員1人1人が、「ありのまま」の姿で最大限の持ち味を発揮する。

そして、違う特質を持つ者同士が、同調ではなく、協調する――。

そんな会社が増えれば、いわゆる「オジサン的」な人々は減っていくと思うのですが……。

佐藤留美
1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年、企画編集事務所「ブックシェルフ」を設立。20代、30代女性のライフスタイルに詳しく、また、同世代のサラリーマンの生活実感も取材テーマとする。著書に『婚活難民』(小学館101新書)、『なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術』(ソフトバンク新書)、『資格を取ると貧乏になります』(新潮新書)、『人事が拾う履歴書、聞く面接』(扶桑社)、『凄母』(東洋経済新報社)がある。東洋経済オンラインにて「ワーキングマザー・サバイバル」連載中。