【相談内容】

「カレと付き合って3年、まだ結婚を決意してくれません。ズバリ、そろそろ見切るべきですか?」(34歳・ナミエさん 出版社)

【牛窪恵さんの回答】

30代前半男性の年収は300万円台が最多

ナミエさんが交際するのは、2歳年下(32歳)のカレ。

同じ出版社に勤務する男性ですが、正社員の彼女に対し、カレはまだ非正規の身。年収は「300万円ちょっと」だと言います。

ナミエさん自身、カレの年収にはさほどこだわっていません。なぜなら先日、衝撃の数字を見たから。既にご覧になった方も多いでしょう。

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30~34歳 男性の所得分布(資料:総務省『就業構造基本調査』より三菱総合研究所作成)

三菱総合研究所が、総務省のデータをもとに、30~34歳の男性の所得分布を表した図。これによると、30~34歳男性の平均年収で、最大のボリュームゾーンは「300~399万円」。97年の500~699万円から、200万円もダウンした計算です。

そう、ナミエさんのカレと同じく「年収300万円台」の男性(30~34歳)は、4人に1人以上。未婚に限ればさらに多い、相当なボリュームゾーンです。

ただ、ナミエさんが「できれば」と望むのは、カレに正社員になってもらうこと。

「私も、フツーに結婚して子どもが欲しい。それを考えると、35~6歳が子作りギリギリのラインでしょ。万が一、私が出産後にいまの会社を辞めても、社会保障だけは維持したい。お金は後々取り戻せても、夫が非正規だと先々キツイので……」

確かにナミエさんの考えも、理解はできます。

いまの社会保障制度は、非正規の男女にとっては冷たい制度。

それも、結婚後は本人だけでなく家族全体に関わってくるから、女性も出産や育児後の“ゆるキャリシフト(正社員→パートタイマーへなど)”を考えると「未来の夫は、できれば正社員がいい」と考えやすい。

実際にある調査を見ても、30代男性のうち、正社員の既婚率は29.3%ですが、非正社員ではわずか5.6%(11年 内閣府「結婚・家族形成に関する調査」)。

非正規の男性が、圧倒的に結婚しにくい様子が分かります。

非正規社員率は約2割

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年齢別・男性「非正規雇用者」推移(出典:総務省「労働力調査」)

ところが、そんな非正規社員男性も、いまや少数派ではありません。

図は、男性について年齢別に「非正規」の割合を示しています。

ナミエさんのカレと同じ25~34歳男性の非正規割合は、いまや“2割弱”にまで達している。未婚者に限れば、さらにこの割合が増えます。

ナミエさんにも、この図を見てもらいました。「そうか、現実は厳しいんですね」と多少は納得してくれましたが、それでもやっぱり譲れない部分があるそう。

「だってカレ、今年こそ『正社員試験』を受けるって言ってくれたんです。それなのに、いつまで経ってものらりくらり。勉強してるフシもなくて、いまの状態に満足しちゃってるのかなって」

なるほど、彼女が言う「正社員試験」とは、勤務先の出版社が年に1回実施する、正社員への登用試験のこと。

ナミエさんとしては、早く年下のカレに試験に合格してもらって、ホッと安心した気持ちで結婚に踏み出したい。でもカレは、どうやらその意志がなさそう……。

ならば、そろそろ見切りをつけないと、結婚後の妊娠・出産が危うくなる。「カレを嫌いじゃないけど、早くどうにかしなきゃ」というのが彼女のホンネなのでしょう。

ただ、ナミエさんと膝を交えて話すうち、悩みの原因が「正社員になろうとしてくれない」とは別の部分にあることが、徐々にわかってきました。

結婚を真剣に考えてくれないカレ

それは、正社員云々は差し置いて、カレが“結婚”自体をキチンと考えてくれそうにないこと。

現在、結婚カップルの初婚年齢は、女性で29.2歳、男性で30.8歳。

32歳のカレは決して「若くはない」のですが、それでも女性ほどは「早く結婚しなきゃ」とは考えにくい。

以前、私があるビジネス誌で、未婚男性に“結婚適齢期”に関する調査をしたところ、45歳を過ぎても「まだ結婚は早い気がする」との回答が、続々と出てきました。

やはり女性と違って、出産の期限は意識しにくいから、一般には「30歳までに」「35歳までに」など、年齢の節目を「結婚希望年齢」と考えます。

32歳のカレも、たぶん「35歳過ぎに」と、漠然と考えているのでは?

以前、ある男性情報誌の編集長も、次のように教えてくれました。

「僕たちの調査でも、男性の『しっかりしなきゃ』ラインは、35歳ぐらい。仕事がようやく落ち着いて、自分のペースで毎日生活できるようにならないと、男性はなかなか結婚まで、意識がいきにくいんですよ」

とはいえ女性、とくにナミエさんのようにカレより“年上”の女性にとっては、そこまで待っていると「妊娠できないかも」との不安もある。

では一体、どうやってカレに「結婚プレッシャー」をかけるのか?

古典的な手法は、おもに次のとおりです。

「結婚プレッシャー」をかける5つの方法

<古典的な結婚プレッシャー>

◆「そろそろ親に会って欲しいんだけど」と切り出す
◆ カレの親御さんと仲良くなり、間接的に「結婚したら?」と言ってもらう
◆『ゼクシィ』(リクルート)などの結婚情報誌をチラつかせる
◆「結婚してくれないの? なら別れる!」と、二者択一を迫る
◆「だったら私から」と逆プロポーズ

このほか、以前ご紹介した「期間限定商法」(http://president.jp/articles/-/11845)も、飽食の時代に育った20~34歳ぐらいの男性には有効な手段。

上記との合わせ技で、32歳のカレに、「33歳までに正社員試験を受けてくれないと、ちょっと結婚は厳しいかな」とか、「私の次(35歳)の誕生日、家でパーティやるから、親に会ってくれるよね?」など、具体的な期限を切ってあげると、カレのほうも「だったら、いまからこうしないと」と焦りが生まれるでしょう。

さらにもう一つ。

実は男性にも“父性”があり、子どもができた際はもちろん、結婚前でも30代に入ったころから、徐々に刺激されることがわかってきました。

たとえば、男性の「浮気」に関する研究。

米国科学アカデミーが08年に発表した研究報告を見ると、一部の男性(「promiscuity gene(乱雑遺伝子)」を持つ人など)を除く、大多数の男性の浮気は、「30歳」でピークを迎える、とのこと。その後はどんどん減少傾向に転じます。

その間、男性の体内では、男性らしさや攻撃性を象徴する「テストステロン」が減り、逆に「癒しホルモン」「優しさホルモン」などと呼ばれるプロラクチンやオキシトシンが増え始める。

これが、「父親になりたい」「妻子を大事にしたい」といった、父性につながるとされているのです。

複数の学者は、その理由を「職場で、若いころほど攻撃性を発揮する必要がなくなるから」や、「20代のときほど生殖本能がなくなり、おのずと『家族を大事にしたい』と思う年齢だから」だといいます。

男の父性を刺激する方法

では、現在32歳になる、ナミエさんのカレ。

どうアプローチすれば、彼の「父親になりたい」「妻子を大事にしたい」といった、父性を刺激できるのでしょう?

それはズバリ、「少しずつ甘えてみる」こと。

その手法については、次回以降に詳しくご紹介しましょう。

ひと言だけ先に言うなら、カレに、「いつになったら結婚してくれるの!?」と圧をかけすぎると、「引く」「コワい」と男性が怯えてしまうか、あるいは「うざいよ!」とキレてしまうかもしれない。

前者の場合、プロラクチンやオキシトシンが過度に放出され、男性が性的欲求を失ったり、悪くするとEDの原因にもなり兼ねない。

他方の後者では、「うざい」などの怒りが男性の闘争心を刺激し、テストステロン値を上げ、結果的に「エッチ(SEX)の頻度は増えても、この子と結婚したい、大事にしたいとは考えにくい」となる危険性もある。

逆に、女性に可愛く甘えられ、最終的に「私って、あなたがいないとダメみたい」「ずっと一緒にいたいな」と優しく言われたら……。

そこで初めて、父性が激され、「ずっと一緒にいてあげたい」「一生守ってあげたい」と、カレも結婚を意識し始めるはずなのです。

もちろん、多少の時間はかかります。でも以前お伝えしたとおり、女性の場合は35歳までに「出逢いの95%が終わっている」(http://president.jp/articles/-/10888?page=2)ことを考えると、34歳のナミエさんが、あっさりいまのカレに見切りを付けるのはもったいない。

カレの父性をうまく刺激しながら、結婚への階段を着実に上がってみませんか?

牛窪 恵
1968年、東京都生まれ。大手出版社勤務ののち、フリーライターとして独立。 2001年、マーケティング会社インフィニティを設立。定量的なリサーチとインタビュー取材を徹底的に行い、数々の流行キーワードを世に広める。『アラフォー独女あるある!図鑑』(扶桑社)など著書を多数執筆する一方で、雑誌やテレビでも活躍。10月末『大人が知らない「さとり世代」の消費とホンネ』 (PHP研究所)が発売。12月5日『「バブル女」という日本の資産』(世界文化社)が発売に。財務省財政制度等審議会専門委員。